王羲之1  物憂げダンディ

文字数 497文字

謝安(しゃあん)さま、王羲之(おうぎし)に漏らす。

「自分もずいぶん
 歳をとってきたものだと思います。

 ここ最近、どうにも喜び、悲しみに
 揺さぶられ通しとなっております。

 親友と楽しい時間を過ごした後、
 彼と別れてしまえば、
 数日間は虚脱感が抜けぬのです」

十三年年長の王羲之さん、
うんうん、わかるよ、と頷いた。

「歳をとる、とは、
 往々にしてそう言うものだ。
 そう言うときは音楽に心を委ね、
 気持ちを紛らせようとするのだがね。

 とは言え、心のどこかでは、
 一人で喜びに浸っているところを、
 子供たちに目撃され、
 邪魔されてしまうのではないか、
 そう、恐れてもしまうのだよ」



謝太傅語王右軍曰:「中年傷於哀樂。與親友別、輒作數日惡。」王曰:「年在桑榆、自然至此。正賴絲竹陶寫、恆恐兒輩覺、損欣樂之趣。」

謝太傅は王右軍に語りて曰く「中年にして哀樂に傷む。親友と別るれば輒ち數日の惡しきを作す」と。王は曰く「年の桑榆に在るれば、自ら此に至るは然れり。正に絲竹に賴り陶寫すれど、恆に兒輩の覺りにて、欣樂の趣を損なうを恐る」と。

(言語62)



なんだこのイケオジ×2……。絶対こいつら雨降りの窓際で楽器片手に語らいあっていやがるだろ……。
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