左思1  三都賦

文字数 810文字

文学者の左思(さし)が『三都賦(さんとふ)』を書いた。

だが誰に見せても不評。
左思、がっくりとくる。

そこに現れるは埋もれた才能発見マン、
我らが張華(ちょうか)さん。
三都賦を読んで、言う。

「この作品は、
 班固(はんこ)両都賦(りょうとふ)張衡(ちょうこう)両京賦(りょうきょうふ)にも
 十分匹敵するよ。
 だが悲しいかな、きみの名声は
 未だ世に重んぜられていない。
 高名な人間の紹介を受けるとよい」

えっ張華さんやってあげてくださいよ。

ともあれ左思、文人としての名声高い
皇甫謐(こうほいつ)にこのことを相談する。
三都賦を読んだ皇甫謐、読んでビビる。
すぐに筆を執り、

「三都賦すげえぞ!」

そう、宣伝した。

すると
以前三都賦をバカにしていた者たちは、
全員すぐさま襟を正し、絶賛し始めた。



左太沖作三都賦初成,時人互譏訾,思意不愜。後示張公。張曰:「此二京可三,然君文未重於世,宜以經高名之士。」思乃詢求於皇甫謐。謐見之嗟嘆,遂為作敘。於是先相非貳者,莫不斂袵讚述焉。

左太沖の作せる三都賦の初めて成るに、時の人は互いに譏訾せる有りて、思が意は愜せず。後に張公に示す。張は曰く:「此れ二京を三とすべし、然し君が文は未だ世に重んぜられず、宜しく以て高名の士を經るべし」と。思は乃ち皇甫謐に詢求す。謐は之を見て嗟嘆し、遂には敘を作せるを為す。是に於いて先に相い貳せざる者に、斂袵して讚述せざる莫し。

(文學68)



左思
高名な文人。なのだが、この認められ方はまんま現代でも見受けられててつらいですね。まぁ人間なんてそんなもんだってのはわかってますが。いいだけじゃダメ、時宜に乗らないと。そしてこの当時、時宜とは人の形をしていた。

班固・張衡
どっちも漢代のバケモノ学者にして文学者である。班固は漢書の編纂者だし、張衡は天文や暦に関して莫大な功績を残している。そう言う「埒外の奴ら」に比されるというのは、並大抵のことではない。

皇甫謐
世説新語の注者、劉孝標(りゅうこうひょう)とおなじ「書淫」のあだ名貰ってて笑う。いまとなっては左思の方が知名度上なんですよねー。ちかたないね。
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