郗鑒2  朱博の翰音

文字数 442文字

郗鑒(ちかん)さまは司空、
つまり人臣の極み、三公に上り詰めた。

しかし郗鑒さまは、
この辞令を受け取った時に、
周辺のものに向けて、
こう漏らしている。

「常日頃、それほど多くのものを
 望んできたつもりはない。
 世の中が乱れてしまっていたために、
 ついにはこのような地位にまで
 なってしまった。

 前漢の時代、
 後に失政をして自殺した朱博(しゅはく)
 丞相の地位についた時、
 どこかから鐘の音が聞こえてきた、
 と言われている。

 今、私の胸中でも、
 その鐘が鳴っているよ。
 分不相応な叙命を得てしまい、
 実に恥ずかしい限りだ」



郗太尉拜司空,語同坐曰:「平生意不在多,值世故紛紜,遂至台鼎。朱博翰音,實愧於懷。」

郗太尉は司空を拜せるに、同坐に語りて曰く:「平生より意は多きを在さず、世故の紛紜たるに值い、遂には台鼎に至る。朱博の翰音、實に懷けるに愧づ」と。

(言語38)



陶侃、郗鑒と言う「蘇峻から晋を救った英雄」の扱いがかなりいい。何と言うか、庾亮さん涙目である。とは言っても扱いの重さ的には明らかに庾亮の勝ちなんだけど。
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