蔡謨1  失政したる宰相

文字数 711文字

論壇の徒、王濛(おうもう)劉惔(りゅうたん)
彼らは蔡謨(さいも)さんのことを常々侮っていた。

そんな二人が、ある時
蔡謨さんのところに遊びに行く。

語らい合うことしばし、おもむろに、
二人が蔡謨さんに対して聞く。

「あなた様は、王衍(おうえん)様とご自身を比較し
 どうお思いになられますでしょうか?」

すると蔡謨さん、答える。

「あの方には及ばぬな」

劉惔と王濛、目配せし合い、吹き出す。
あれ以下ですか! へー!
そうですか!!!!

更に聞く。

「で、っでは、っぷくく、
 ど、っどのあたりが、っくくっ、
 及ばないと、っぷっ、
 お考え、なのですか?
 ップゲラッ!」

すると蔡謨さん、答えた。

「かれは、そなたらのようなやからに
 まとわりつかれずに済んでおるのでな」



王、劉每不重蔡公。二人嘗詣蔡,語良久,乃問蔡曰:「公自言何如夷甫?」答曰:「身不如夷甫。」王、劉相目而笑曰:「公何處不如?」答曰:「夷甫無君輩客!」

王、劉は每に蔡公を重んぜず。二人は嘗て蔡を詣で、語れること良や久しく、乃ち蔡に問うて曰く:「公は自ら夷甫とでは何如と言わんか?」と。答えて曰く:「身は夷甫に如かず」と。王、劉は相い目し、笑いて曰く:「公の何處が如かざらんか?」と。答えて曰く:「夷甫に君が輩なる客無し!」と。

(排調29)



このエピソードの乗るタイミングは
謝安(しゃあん)が出仕するかどうか、と言うところ。

つまり、蔡謨さんの晩年に近い。

そうすると彼らは、
三公にまで上り詰めながらも、
最終的には庶人に「落ちぶれた」
蔡謨さんのところに訪れたのだ、
と、想定できる。

となれば、王衍への比定とは、
顕職にありながらも、
夷狄(いてき)の勢いを止めきれなかった
「無能」への、おちょくり。

……と、言った辺りになるだろうか。

ていうか劉惔と王濛、性格最悪だなw
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