張天錫1 前涼最後の王

文字数 694文字

前涼(ぜんりょう)張天錫(ちょうてんしゃく)
晋より涼州刺史(りょうしゅうしし)に任命されていたが、
独立を宣言していた。

その後前涼は前秦(ぜんしん)に攻め滅ぼされる。
しかし張天錫は、前秦の王、苻堅(ふけん)
侍中(じちゅう)として召し抱えられていた。

淝水(ひすい)の戦いが起こり、前秦が崩壊すると、
張天錫は晋軍に捕まり、
孝武帝(こうぶてい)の元に引っ立てられた。

孝武帝は張天錫を大層気に入り、
一旦話し出せば日を跨ぐことも
しばしばあった。

それを妬んだある者が、
宴席上で張天錫に問う。

「北方の鄙地には、
 何か良いものはあるのですかな」

張天錫は答える。

「樹になる果実は非常に甘く、
 鳥たちは美しく鳴き、
 チーズは人をほころばせます。
 妬み嫉みとは無縁な、
 素晴らしい地ですよ」


 
張天錫為涼州刺史,稱制西隅。既為苻堅所禽,用為侍中。後於壽陽俱敗,至都,為孝武所器;每入,言論無不竟日。頗有嫉之者,於坐問張:「北方何物可貴?」張曰:「桑椹甘香,鴟鴞革響;淳酪養性,人無嫉心。」

張天錫は涼州刺史と為り、西隅にて稱制す。既にして苻堅に禽わる所と為り、用いられ侍中と為る。後に壽陽にて俱に敗し、都に至りて孝武の器せる所と為る。入れる每の言論は日に竟えざるは無し。頗る之を嫉む者有り、坐にて張に問うらく「北方にては何ぞの物をか貴となすべきか?」と。張は曰く「桑椹は香り甘く、鴟鴞は響き革め、淳酪は性を養う。人に嫉む心無し」と。

(言語94)



張天錫
前涼に最盛期を齎した名君、張駿(ちょうしゅん)の末子。363 年に甥の張玄靚(ちょうげんせい)を殺して涼王位につくのだが、376 年には前秦に降伏。ここで前涼は滅亡する。しかし淝水で前秦が崩壊すると東晋に帰属。この人の前秦降伏以後の振る舞いを見ていると、張玄靚の浮かばれなさが半端ないな、と思えてならない。
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