王導35 石頭よりの風

文字数 533文字

王敦(おうとん)の乱以降、
庾亮(ゆりょう)の権勢がどんどん大きくなり、
王導(おうどう)さまの立場を揺らがせとしていた。

さて庾亮は石頭(せきとう)城、
王導さまは()城にいることが多い。
この二つの城は東西に隣り合っている。
石頭が西、冶が東だ。

ある時強い西風が吹き、
砂埃が巻き起こった。

つまり王導さまから見ると、
石頭城から噴いた風により
砂埃を叩きつけられている感じになる。

なので、王導さまは言う。

「庾亮のやつ、
 わしを風で汚しおるか」



庾公權重、足傾王公。庾在石頭、王在冶城。坐大風揚塵、王以扇拂塵曰:「元規塵汙人。」

庾公の權の重かりせば、王公を傾くに足る。庾の石頭に在り、王の冶城に坐せる在れるに、大いに風の塵を揚げたれば、王は扇を以て塵を拂いて曰く「元規が塵、人を汙さん」と。

(輕詆4)



「石頭に在す」という言葉の扱いは難しい。蘇峻(そしゅん)の乱がおこる前までの庾亮のメイン治所は石頭であったようだが、一方で王敦や蘇峻など「反乱者が建康(けんこう)に乗り込んでくる」の隠喩としてもちょくちょく機能している。

また「庾公の権が重く」なるのだって、王敦の乱後、蘇峻の乱後でそれぞれ意味合いが違うが、どちらにでも使える。

深読みはできるけど、個人的には庾亮をからかう意図で言った、という方向であったらいいなあ、と思う。世説新語の王導さま、結構ウカツだし。
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