孟嘉   仮病つかわれた兄

文字数 888文字

孟嘉(もうか)とその弟の孟陋(もうろう)
武昌(ぶしょう)郡の陽新(ようしん)県に住んでいた。

孟嘉が仕官すると、その才能は
瞬く間に世に知られたのだが、
孟陋は武昌に引き籠ったまま、
出てこようとはしない。

そこで建康(けんこう)の人びとは、
孟陋をひと目見たいと、
「兄上の病が篤くなりました」
と言う虚報で孟陋を釣りだした。

お前ら……。

兄のピンチを聞き、
慌てて建康に出てくる孟陋。

やってきた孟陋に対し、
時の名士たちはこぞって会いに行く。
そして誰もがその人となりを
激賞せずにはおれなかった。

そして、彼らは言う。

「あの弟がいたのであれば、
 兄は死んでも構わんな!」

いや、その……。



孟萬年及弟少孤,居武昌陽新縣。萬年遊宦,有盛名當世,少孤未嘗出,京邑人士思欲見之,乃遣信報少孤,云「兄病篤」。狼狽至都。時賢見之者,莫不嗟重,因相謂曰:「少孤如此,萬年可死。」

孟萬年、及び弟の少孤は武昌の陽新縣に居す。萬年の遊宦せるに、當世の盛名を有せど,少孤は未だ嘗て出でず、京邑が人士は之を見んと欲せるを思え、乃ち信を遣りて少孤に報せしめ、云えらく「兄が病、篤し」と。狼狽し都に至る。時賢の之に見えたる者に嗟重せざる莫く、因りて相い謂いて曰く:「少孤の此くの如きなれば、萬年は死すべし」と。

(棲逸10)



孟嘉
晋書では、この人だけ何故か桓温(かんおん)さまの附伝として伝が載っている。そこに載ってる桓温の「酒なんて何がいいんだ」エピソードとか面白いのに世説新語にはないんですよね。ふしぎである。つーかこんなクソどもの見世物になったらそりゃ孟陋も出てきたくなくりますわよね。

なおお酒に関するエピソードはこんな感じです。


孟嘉はお酒がめっちゃ好き。
いくら飲んでも乱れない。
そんな孟嘉に、桓温さまが聞く。

「酒の何がよくて、
 お前はそうも飲んでるんだ?」

孟嘉は答える。

「公よ、あなたさまが
 酒に酔う事の真の楽しさを
 まだご存じないだけでございます」


嘉好酣飲,愈多不亂。溫問嘉:「酒有何好?而卿嗜之?」嘉曰:「公未得酒中趣耳。」
嘉は酣飲を好み、愈いよ多かれど亂れず。溫は嘉に問うらく:「酒に何ぞの好しき有りや? 而して卿は之を嗜まんか?」と。嘉は曰く:「公は未だ酒中の趣を得たらざるのみ」と。
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