殷仲堪3 文学の徒

文字数 541文字

殷仲堪(いんちゅうかん)と言えば、
名の通った文学の徒である。


例えば鍾会(しょうかい)さんが議論の中心にいた、
才性四本論(さいせいしほんろん)
性格と才能はリンクするのか、
更にそれは立身とどうかかわるのか、
みたいなことをあーだこーだと
こねくり回す感じのやつだ。

こねくり回されまくったあげく、
もはや常人にはちんぷんかんぷんな
代物と化していた。

で、殷仲堪。清談のトップランナー。
人々は彼が、清談に関する
あらゆるテーマを研究し尽くしている、
と思っていた。

それを聞き、殷仲堪、ため息。

「私が四本論を理解できていれば、
 もっとうまくやれるのだが……」


また、こんなコメントを残してもいる。

老子(ろうし)を三日読まずにいると、
 舌の根がこわばるかのような
 思いがするのだ」



殷仲堪精覈玄論,人謂莫不研究。殷乃歎曰:「使我解四本,談不翅爾。」
殷仲堪は玄論を精覈せば、人は研究せざる莫しと謂う。殷は乃ち歎じて曰く:「我をして四本を解せしむらば、談は翅に爾らざらん」と。
(文學60)

殷仲堪云:「三日不讀道德經,便覺舌本閒強。」
殷仲堪は云えらく:「三日道德經を讀まざらば、便ち舌が本の閒強なるを覺ゆ」と。
(文學63)



淡々と研鑽を重ねる文学の徒、と言う感じのするコメントで素敵。ただこの人、やっぱり文学者になるべきだったんだろうね……政治の世界は向いてなさそうですわ……。
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