支遁6  于法開マジでアレ

文字数 1,051文字

于法開(うほうかい)と言う僧侶がいた。
議論はすごいが人品はわりとアレ、
みたいな、まぁアレな人だ。

はじめのうちこそ支遁(しとん)
人気を二分していたようなのだが、
何せアレだから、どんどん人気は
支遁に吸収される。

そのことにムカついた于法開、
ついには(しょう)に隠遁してしまった。

そんな于法開、都に用事ができたため、
弟子を使いにやろうと考える。
そしてここで悪い顔。于法開さんです。

剡から都に出る時、会稽(かいけい)を通過する。
会稽では支遁が「小品(しょうひん)」について
講義をしている、と言う。

そこで弟子に、こう語る。

「お前が会稽に出た時、
 ヤツは小品のこの辺りを
 講義しているだろう」

そう言うと、相当する箇所に関する
反論の手法を数十ほど示した。

「もっともこの辺りは、
 もとより解釈が
 難しいところなのだがな。

 その辺りをつついてしまえば、
 ほれ、この通りよ」

なるほど、そう言うものなのか。
弟子氏、于法開の言いつけ通り、
支遁のもとに向かった。

そして、支遁の講義に侵入。
まさにお師匠の読み通りの
箇所である。

なので早速、師匠の手法を援用。
支遁にうやうやしくも反論してみた。

ここからの往来は
かなりの回数にのぼったという。
それをこなすこの弟子どのも
ただ者ではない感じだが、
ともあれ、結果は支遁の敗北。

敗北した支遁、
声を荒らげたそーである。

「お前が、お前のようなものが、
 なんで人のお使いなんぞで
 やって来るのだ!」



于法開始與支公爭名,後精漸歸支,意甚不分,遂遁跡剡下。遣弟子出都,語使過會稽。于時支公正講小品。開戒弟子:「道林講,比汝至,當在某品中。」因示語攻難數十番,云:「舊此中不可復通。」弟子如言詣支公。正值講,因謹述開意。往反多時,林公遂屈。厲聲曰:「君何足復受人寄載来!」

于法開は始め支公と名を爭えど、後に精漸と支に歸さば、意は甚だ不分にして、遂には剡下に遁跡す。弟子を遣りて都に出さしめ、語りて會稽に過らしむ。時に支公は小品を正講す。開は弟子に戒むらく:「道林が講、比に汝が至らば、當に某品が中に在り」と。因りて語を示し攻難せること數十番にして、云えらく:「舊より此の中は復た通ずべからず」と。弟子は言が如くし支公に詣づ。正は講ぜるに值り、因りて謹述し意を開ず。往反は時を多きにせば、林公は遂に屈す。聲を厲にして曰く:「君は何ぞ復た人の寄載を受け来たるに足らんか!」と。

(文學45)



手口が陰険すぎる。さすがアレな于法開さんである。そりゃ人気出ねえわ。なおここで出てくる弟子どのは法威(ほうい)と言うらしい。高僧伝にその名前が載っている。

つーか盛大に悔しがる支遁さん可愛い。
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