華歆2  華歆と管寧

文字数 775文字

華歆(かきん)は、管寧(かんねい)というひとと仲が良かった。

二人とも出世や貨殖に対して
無欲だということで知られていた。

ある時、二人で畑を耕していた。
すると畑から、金のかけらが出てくる。

それを見つけた管寧は
石や瓦と同じ扱いをしていたし、
華歆も、一度拾い上げたが、
すぐ遠くへ放り投げてしまった。


またある時、二人して本を読んでいた。
一つの長椅子に、並び腰かけていたのだ。

やがて外の軒先に、
えらく豪華な車が通りがかった。
明らかにセレブの乗りそうな奴だ。

管寧はその話を聞いても
読書を継続していたが、
華歆は本をなげうち、
野次馬になって見に行った。

その様子を見て管寧、
席を二つに割ってしまう!

「あなたは私の友人ではなかったな!」

いや管寧さん、
それって器が小さいだけじゃ……。



管寧、華歆共園中鋤菜,見地有片金,管揮鋤與瓦石不異,華捉而擲去之。又嘗同席讀書,有乘軒冕過門者,寧讀如故,歆廢書出看。寧割席分坐曰:「子非吾友也。」

管寧と華歆の共に園中にて菜を鋤やせるに、地に片金有るを見るも、管は鋤を揮いて瓦石と異ならず、華は捉えて擲ち之を去る。又た嘗て同席して讀書せるに、軒冕に乘りて門を過ぎたる者有り、寧は讀めること故との如くせど、歆は書を廢て出でて看る。寧は席を割りて坐を分けて曰く:「子は吾が友に非ざるなり」と。

(德行11)



管寧
かんねい、とよみがなだけで言ってみると、孫呉(そんご)の愚連隊になってしまって面白い。もちろん完全に無関係です。黄巾(こうきん)の乱辺りで一度幽州(ゆうしゅう)、つまり東北の外れに疎開。そこのボスの公孫度(こうそんど)に気に入られて召し抱えられそうになるも辞退して隠棲。やがて中原に戻ってきたときにもたびたび出仕を請われたが軒並み辞退、そして死んだ。要は隠者である。だいたい本当の聖人なら席は割らないっすよね? かれに較べられちゃうと、さすがに華歆さんには俗っぽさがあって親しみがあるよね、というお話でした。
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