羊祜3  羊祜のオッカケ

文字数 876文字

羊祜(ようこ)が北東方面の赴任地から、
洛陽(らくよう)に向けて帰還する時の話である。

帰還ルートの途上にある地、
野王(やおう)の長官だった郭奕(かくえき)
羊祜が野王の地に到着したと聞くと、
早速人を遣って迎えさせるわ、
むしろ自ら出向くわ。

で、ひとたび羊祜を見ると、
「おぉ、この儂ほどではないにせよ、
 なかなかやりよる者のようだな!」
と感心した。

それから度々羊祜の元に出向く。
すると今度はこう言った。
「いやいや、これはしたり!
 あの者、儂よりも
 はるかに優れておるわ!」

そして羊祜が野王を抜ける。
けれども郭奕、そこから数日一緒にいた。
道程にして数百里。そんな有様なので、
まぁ政府としては公務放棄として
免職させざるを得ない。

それでもなお、郭奕は言うのだ。
「いやはや、あれに優れるのは
 顔回(がんかい)くらいしかおるまいて!」



羊公還洛,郭奕為野王令。羊至界,遣人要之。郭便自往。既見,嘆曰:「羊叔子何必減郭太業!」復往羊許,小悉還,又嘆曰:「羊叔子去人遠矣!」羊既去,郭送之彌日,一舉數百里,遂以出境免官。復嘆曰:「羊叔子何必減顏子!」

羊公の洛に還ぜるに,郭奕は野王の令たり。羊の界に至るに、人を遣わせ之を要えしむ。郭は便ち自ら往く。既に見ゆれば、嘆じて曰く:「羊叔子は何ぞ必ずや郭太業に減ぜん!」と。復た羊が許に往き、小悉にして還り、又た嘆じて曰く:「羊叔子は人より去ること遠からん!」と。羊の既に去らば、郭の之を送るに日を彌り、一に數百里を舉し、遂には境を出るを以て官を免ざる。復た嘆じて曰く:「羊叔子は何ぞ必ずや顏子に減ぜん!」と。

(賞譽9)



郭奕
魏の名将、郭淮(かくわい)の甥。ちなみに同姓同名が魏末晋初の辺りにもいて面倒くさい。まぁそれぐらいしか事跡はないが、それを補ってなお有り余るこの羊祜ラヴっぷりと来たら。羊祜もさぞ鬱陶しかったろうなぁ。

顔回
孔子(こうし)の高弟。夭折したため、その喪失を孔子が激烈に嘆いたというエピソードがある。ところで全然関係ないんですけど、小学生時代に孔子の伝記漫画読んだ時、このひとと孔子の関係、幼心に「アッーか? アッーなのか?」って疑問に思ったりもしましたよね。まぁ本当にどうでもいいんですけど。
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