庾翼1  乗馬の腕

文字数 779文字

庾翼(ゆよく)が出張したあとのことだ。

庾翼の妻の(りゅう)氏、母親の(げん)氏と共に
安陵(あんりょう)城の物見台の上で
その帰りを待っていた。

あ、補足。
奥さんのお母さんは阮氏出身で、
劉綏(りゅうすい)ってひとに嫁ぎました。
劉綏の娘となるので、
奥さんは劉氏なのです。

やがて二人の視界に、
庾翼の一行が収まる。

先頭を行く馬は明らかに良馬。
庾翼が載る輿はとても豪勢。
はぁ、ずいぶんなお大尽ですこと、
阮氏、感心した。

ふと思いつき、阮氏、娘に聞く。

「そう言えば、庾翼様、
 騎乗を上手くこなされるのだとか。
 そのご様子、
 どうすれば見せて頂けるのかしら?」

他ならぬお母様の頼みならば、
劉氏、戻ってきた庾翼に頼む。
すると庾翼、いったん行列を解散させ、
早速乗馬、その腕を披露した。

阮氏と劉氏の周りを二巡りしたところで、
思わぬアクシデント!
何と庾翼、落馬!

これははづかしい、
どころの話じゃないですよ……。

けど庾翼さん、
ケロッとしたもんだったそうである。



庾小征西嘗出未還。婦母阮是劉萬安妻,與女上安陵城樓上。俄頃翼歸,策良馬,盛輿衛。阮語女:「聞庾郎能騎,我何由得見?」婦告翼,翼便為於道開鹵簿盤馬,始兩轉,墜馬墮地,意色自若。

庾小は西に征すも、嘗て出でるに未だ還らず。婦の母の阮は是れ劉萬安が妻なれば、女と安陵が城樓の上に上る。俄の頃にして翼の歸れるに、良馬に策ち、輿に盛りて衛らる。阮は女に語るらく:「庾郎の能く騎せるを聞けるに、我れ何の由にてか見えたるを得んか?」と。婦の翼に告ぐるに、翼は便ち道にて鹵簿を開きて馬を盤じ、始め兩轉せるも、馬より墜ちて地に墮つ。意色は自若たり。

(雅量24)



失敗したときにこそその人の本質が見えるといいますが、泰然とした人だったのか、あるいは痩せ我慢だったのか。この辺は庾翼伝を読んでくとなにか見えるものがあるんでしょうかね。まぁ、そろそろ雑になら晋書記述も日本語と同じスピード感で読めるかな……。
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