曹髦   高貴郷公殺害事件

文字数 923文字

()明帝(めいてい)曹叡(そうえい)の死後即位した
曹芳(そうほう)が皇帝の資格無しとして廃され、
聡明で知られた曹髦(そうぼう)がつけられた。

この頃、司馬懿(しばい)
その息子である司馬師(しばし)(しょう)兄弟が
皇室を乗っ取る勢いで権勢を広げていた。
やがて司馬師が死亡、司馬昭が指揮を執る。

これをチャンスと見たか、
曹髦は司馬師打倒のため決起。
しかし彼我の戦力の差は絶望的だった。

とは言え、ここで事件が起こる。
曹髦が交戦のドタバタで、
「皇帝の地位にありながらにして」
殺されてしまったのだ。

「皇帝ではない」のなら、まだしも、
現役のままの死亡は、天に対する反逆。
驚天動地のニュースを、
誰もが大いに騒ぎ立てる。

司馬昭、アワアワする。
侍中の陳泰(ちんたい)にすがる。

「おおおおおおい、こ、っこれ、
 どうすりゃ静まるんだよ」

陳泰が言う。

「はぁ。実行犯の賈充(かじゅう)処刑して、
 スケープゴートにするしか
 ないんじゃないっすかね」

「!?
 ばばばばばばか、そんなの無理だろ!
 あいつ殺したらそれこそ
 諸々立ち行かねーわ!
 もうちょい穏便な奴ないのか!」

「(は? こいつ死ねばいいのに)
 なら、もっとエグい提案しましょうか?
 正直、これが一番穏便ですよ」



高貴鄉公薨,內外諠譁。司馬文王問侍中陳泰曰:「何以靜之?」泰云:「唯殺賈充,以謝天下。」文王曰:「可復下此不?」對曰:「但見其上,未見其下。」

高貴鄉公の薨ぜるに、內外に諠譁あり。司馬文王は侍中の陳泰に問うて曰く:「何をか以て之を靜めんか?」と。泰は云えらく:「唯だ賈充を殺し、以て天下に謝するのみ」と。文王は曰く:「復た此れの下べからざらんか?」と。對えて曰く:「但だ其の上のみ見え、未だ其の下は見えず」と。

(方正8)



陳泰
魏の名臣、陳羣の息子。本人もまた名臣。ついでに言えば名将としてカウントされることも多い。このエピソードは典拠によって内容がいろいろ変わってくるけど、新語の陳泰が一番えぐくて好き。
https://wl.yesx.org/column/chentai-cod.html
こんなコラムに巡り合いました。文学的で素敵。

賈充
実際に曹髦を殺した人。いや正確に言うと実行犯は成済(せいさい)なんだけど。この人の存在感はなかなかに素晴らしい。何せ娘が賈南風(かなんぶう)である。ドロッドロの宮廷謀略もんの主人公張れますよこの人。
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