庾亮10 庾亮さまの人品

文字数 761文字

庾亮(ゆりょう)さまは実に堂々とした振る舞いで、
軽々しさのかけらもなかった。
のだが人びと、
これをポーズだと思っていた。

そんな庾亮さまには数歳になる長男、
庾会(ゆかい)がいる。
この子がまたパパそっくりな振る舞い。

「あっ、じゃあ庾亮さまの振る舞いも、
 あれが地なんだ?」

と、みなが受け入れた。

ある日温嶠(おんきょう)さん、カーテンに隠れて
庾会を驚かせてみた。
すると庾会、少しも驚かず、
おもむろに膝まづき、言う。

「温嶠様ともあろうお方が、
 何故このようないたずらを
 なさったのです?」

これはパパに勝るとも劣らんぞと、
いろいろな人が語るようになった。

のだが、そんな庾会、
蘇峻(そしゅん)の乱のときに殺される。

ある人は言う。

「会くんを見れば、
 庾亮殿のあの振る舞いも
 ポーズでも何でもないのだ、
 とわかるな」



庾太尉風儀偉長,不輕舉止,時人皆以為假。亮有大兒數歲,雅重之質,便自如此,人知是天性。溫太真嘗隱幔怛之,此兒神色恬然,乃徐跪曰:「君侯何以為此?」論者謂不減亮。蘇峻時遇害。或云:「見阿恭,知元規非假。」

庾太尉が風儀は偉長にして、舉止は輕からざるも、時の人は皆な以て假と為す。亮に數歲なる大兒有り、雅重の質、便ち自ら此くの如きたれば、人は是れを天性と知る。溫太真は嘗て幔に隱れて之を怛かすも、此の兒の神色は恬然にして、乃ち徐ろに跪きて曰く:「君侯は何をか以て此を為せるや?」と。論者は亮に減さずと謂う。蘇峻の時に害さるに遇う。或るひと云えらく:「阿恭を見るに、元規の假に非ざるを知る」と。

(雅量17)



庾会
十九歳で殺されてる。まぁ例によって夭折した才人は age てくアレだろう。死者については何とでも言えますからねー。ただ、やっぱり後世人は「生き残った奴が凄い奴だ」という事は認識しつつも「すごいけど名前が残ってない人だっていくらでもいる」と肝に銘じておくべきなのだろうね。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み