殷浩7  殷浩について語る

文字数 1,035文字

殷浩(いんこう)さん、周りの人から
どんな風に言われてたんだろう。
周りの人からのコメントを集めてみた。


王胡之(おうこし)は語り合った後に
嘆息しながら言っている。
「こちらの論が出尽くしたところで、
 かれの論の幅広さ、
 奥深さには全く底が見えぬのだ」
あれっ諱とかあざな犯してるけど
賞誉でいいんですかこれ。


簡文(かんぶん)さまは仰っている。
「論が即核心を突くことはない。
 が、その論の展開の緻密さ、
 周到さは見事なものだ」


王濛(おうもう)は言っている。
「飛び抜けて秀抜、と言う訳ではない。
 ただ、秀でた所の運用のしかたが
 飛び抜けている」

一方、劉惔(りゅうたん)にこんなことを語っている。
「あの方は何事にかこつけても、
 すぐ易の話に絡めてこられたな」

また、劉惔と一緒に殷浩さんのもとで
語らい合った後、劉惔の漏らしたコメント
「殷浩殿は本当に素晴らしいな」
に対しては、こう返している。
「そりゃあれだ、
 お前、煙に巻かれてるんだよ」



王司州與殷中軍語,歎云:「己之府奧,蚤已傾寫而見,殷陳勢浩汗,眾源未可得測。」
王司州は殷中軍と語り、歎じて云えらく:「己が府の奧、蚤きに已に傾寫の見ゆるに、殷の勢を陳せること浩汗なれば、眾源未だ測るを得べからず。」
(賞譽82)

簡文云:「淵源語不超詣簡至;然經綸思尋處,故有局陳。」
簡文は云えらく:「淵源が語の詣は簡至を超えざるも、然して綸なるを經て思を尋ぬる處、故より經陳有り」と。
(賞譽113)

王仲祖稱殷淵源:「非以長勝人,處長亦勝人。」
王仲祖は殷淵源を稱うるらく:「長ずるを以て人に勝るに非ざれど、長を處せるに亦た人に勝りたるなり」と。
(賞譽81)

王長史與劉尹書,道淵源「觸事長易」。
王長史は劉尹に書を與え、淵源を道えらく「事に觸れるに易に長ず」と。
(賞譽121)

王仲祖、劉真長造殷中軍談,談竟,俱載去。劉謂王曰:「淵源真可。」王曰:「卿故墮其雲霧中。」
王仲祖、劉真長は殷中軍に造りて談じ、談の竟うるに、俱に載りて去る。劉は王に謂うて曰く:「淵源は真に可なり」と。王は曰く:「卿は故より其の雲霧が中に墮ちたり」と。
(賞譽86)



王濛と劉惔が、殷浩さんに対してあんまシンプルじゃない感情をお持ちですねー。時系列で追ってみると、王濛は割と早い段階で殷浩さんを胡散臭く感じてたっぽい。

劉惔ははじめ全然敵わなかった殷浩さんに憧れにも近い感情を抱いていたけど、だんだん自身の成長に伴い、殷浩さんを軽んじるようになった、こんな感じかなー。

とりあえず殷浩さん、王濛はともかく、劉惔についてはだいぶ軽蔑してたっぽいですからねー。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み