王導の子1 王劭と王薈

文字数 668文字

王導(おうどう)さまの息子、王劭(おうしょう)王薈(おうわい)
兄弟揃って桓温(かんおん)さまのところに訪問した。

折りも折り、庾亮(ゆりょう)さまの甥、
庾希(ゆき)に謀叛嫌疑がかけられ、
そのあれこれで桓温さまのところも
バタバタしていた。

何せ、庾希処断の号令をかけているのは
他ならぬ桓温さまである。
「自らに逆らうものには容赦しない」。
その意思をお示しになっていたのだ。

さて、王劭と王薈も名族である。
桓温さまの権勢にとって
邪魔者扱いとなれば、
やはり粛清される恐れもないではない。

そんな桓温さまの懐に
飛び込んでしまっていることに、
王薈は目に見えて怯えていた。
そわそわし、帰りたそうにしている。

一方の王劭は、泰然自若。
どっしりと座り、動揺を表に出さない。

やがて捕り物が終わり、
自分たちに累が及ばないことが確定し、
王劭は初めて立ち上がり、去った。

そりゃーみなさん王劭を
褒めやそしますよね、ってもんである。



王劭、王薈、共詣宣武、正值收庾希家。薈不自安、逡巡欲去。劭堅坐不動、待收信還得不定、迺出。論者以劭為優

王劭と王薈は共に宣武を詣づ。正に庾希が家を收むに值う。薈は自ら安んぜず、逡巡し去らんと欲す。劭は堅坐し動かず、收信の還るを待ち、定まらざるを得て、迺ち出づ。論者は以て劭を優ると為す。

(雅量26)



王薈は息子の王廞がのちに反乱を起こしています。そう言うところからその父親もやや下げられざるを得ない立場の人。対する王劭は……この人世説新語中には桓温から「王導さまの息子さんはやっぱすげえなあ」くらいしか言われてないんですよね。正直この二人の評価の差は子世代にマイナスがあるか、ないかの違いでしかない気もするのです。
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