王濛9  いきなりダンスる

文字数 686文字

嵆康(けいこう)と鍛冶仕事に精を出したり、
その嵆康が殺された後には出仕して、
司馬昭(しばしょう)に揶揄された人、向秀。

では、かれはどんな人物だったのだろう。

ひとまずのちの時代のひと、劉惔(りゅうたん)は、
親友の王濛(おうもう)が酔いに興じて
踊りだしたのを見て、コメントしている。

「今日のお前は、
 向秀にも劣らないだろうよ」

おっ、これは間違いなく絶賛ですね。
何せ劉惔と王濛、
東晋中後期の文人トップですものね。


そんな二人は、ほぼ同じタイミングで
王導(おうどう)さまの属官として
取り立てられていた。

ある宴会でのこと。
突然王濛が言い出す。

「王導さま! 実は謝尚の奴、
 なかなか良い舞をするのですぞ」

突然何言いだしてんだこいつ。

しかも謝尚も勝手に踊り出す。
いやほんとに何してんのおまえら。

けど、その舞は見事なものだった。

王導さま、もてなしていた客に言う。

「竹林七賢の王戎(おうじゅう)
 思い出さずにはおれませんな」



劉尹、王長史同坐,長史酒酣起舞。劉尹曰:「阿奴今日不復減向子期。」
劉尹と王長史は坐を同じうせるに、長史は酒に酣じ起ちて舞う。劉尹は曰く:「阿奴の今日は復た向子期に減ぜざらん」と。
(品藻44)

王長史、謝仁祖同為王公掾。長史云:「謝掾能作異舞。」謝便起舞。神意甚暇。王公熟視、謂客曰:「使人思安豐。」
王長史と謝仁祖は同じうして王公が掾と為る。長史は云えらく「謝掾は異なる舞を能く作さん」と。謝は便ち起ちて舞う。神意は甚だ暇なり。王公は熟視し客に謂いて曰く「人をして安豐を思わしめん」と。
(任誕32)



お前ら向秀好きすぎねえか問題。まぁ清談が荘子に多く立脚したことを思えば、そこに向秀がもたらした貢献は莫大なものでしょうし仕方なさそうでもあるんですが。
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