陸機7  華亭の鶴

文字数 731文字

八王の乱の一局面、
司馬乂(しばがい)バーサス司馬穎(しばえい)の兄弟対決。

洛陽(らくよう)に拠点を置いて
防衛戦を展開する司馬乂は、
幾度も司馬穎の軍を打ち破っている。

この経過は、司馬越(しばえつ)が司馬乂を裏切り、
司馬穎につくまで続く。

そんなさなかのことである。

洛陽城建春門(けんしゅんもん)外。
司馬穎軍に属していた陸機(りくき)は、
ここで司馬乂軍と激突、大敗。
洛陽東の七里澗(しちりかん)にまで撤退するが、
その被害は甚大なものであった。

かねてより陸機、幾人かの例外を除けば
中原の多くの人士を軽んずる風であり、
司馬穎陣営内にも多く敵を作っていた。

そんなところに、この大敗である。
盧志(ろし)をはじめとした、
多くの人間より讒言を被り、
処刑されることになってしまった。

陸機、淡々と裁きを受け容れる。
司馬穎の配下であることから
逃れられなかった時点で、
こうなることは決まっていたようなものだ。

だが刑場にまで赴けば、
あふれ出る故郷、華亭(かてい)への思いが
どうしても、詠嘆と共に
口をついてしまうのだ。

「これで、華亭の鶴の鳴き声を、
 再び聞けるようになるのかな」



陸平原河橋敗,為盧志所讒,被誅。臨刑歎曰:「欲聞華亭鶴唳,可復得乎!」

陸平原は河橋にて敗れ、盧志に讒さる所と為り、誅さるを被る。刑に臨み歎じて曰く:「華亭の鶴の唳を聞きたるを欲す、復た得べきかな!」

(尤悔3)



おいそう言う読者の知識に丸投げやめなさい(迫真)まぁお約束のツッコミと言う奴である。

なお、晋書だと陸機の言葉は「華亭鶴唳,豈可復聞乎!」となっており、明らかにニュアンスが違う。晋書バージョンだと「もう華亭の鶴の鳴き声を聞けないのか!」となるのだが、世説新語バージョンは魂が華亭に戻れる、と言ったニュアンスを見る事ができる。

どちらでもいいのです。あなたの陸機にたずねてください。わたしの陸機は世説新語バージョンです。
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