第166話 迷える羊と復活祭のチーズタルト(2)
文字数 1,706文字
翌朝、漫画喫茶を後にした。スーツケースをガラガラと転がしながら、穂麦市駅前に出る。真琴は、穂麦市の隣の飽田市の住民だったが、こちらの方が商業施設も多く、人も多かった。
しかし、これからどうしよう。漫画喫茶で食べたモーニングは、あまり美味しくなく、食べた気がしなかった。
時計を見たら十時過ぎだったが、どこに行くべきか。しばらく駅の近くにある公園のベンチに座り、考えていた。
空は青く、麗らかな春だった。天気はこんなに良いのに、全く気分は晴れない。むしろ、どんどん闇深くなっていくようだった。
スマートフォンには、何研か通知が届いていたが、全部スピリチュアル関係のお知らせだった。一子からセミナーを開くという情報もあったが、今は、参加する気分になれない。
思えば、スピリチュアルも成功している人は一握りで、自分のように不幸になっている人が圧倒的に多そうだった。ネットでちょっと調べても、引き寄せジプシーとか、願いが叶わなかった人の情報が山のように出てくる。スピリチュアルで有名なメゾットの引き寄せの法則も、全員に当てはまる真理というか法則とは言い切れない気がする。むしろ、人によってだいぶ結果に差があり、その格差もえぐいぐらいだった。ピラミッド型の世界じゃないかと思ったりする。
何か閃きそうな気がして、真琴は昨日見た元占い師のブログを再び見てみた。
そこでは、スピリチュアル、神社仏閣、カルト宗教で願いを叶えようとしても、多くの人間は搾取される側に行き、エネルギーだけを吸い取られるとあった。そんな搾取される側のエネルギーで、カルト教祖や一部の金持ち、スピリチュアルリーダーだけが栄えるシステムとある。エネルギーというと、非科学的だが、スピリチュアル好きだった真琴は、妙にしっくりきてしまった。エネルギーというか、人間が何かを信じたり、何か拝む気持ちは、想像以上に力があるんじゃないだろうか。神社に行って隣で拝んでいる人を見ると、その熱心さに圧倒された事もあった。
そのエネルギーを搾取されているだけだとしたら、今の状況は色々と納得してしまった。
しかし、そんな事を考えていたら空腹を覚えた。漫画喫茶で食べたモーニングは食べた気がしないし、腹がなる。
とりあえず、近くにあるコンビニで何か買おうと思ったが、貯金額が頭にちらつき、レジに持っていく事ができなかった。
パンやおにぎり一個ぐらい買えるだけのお金はあるのに、何故か怖くなって買う事ができない。
他のコンビニにも向かってみたが、身体がこわばり、手が動かなかった。
そんな事をしながら、駅の近くから住宅街を彷徨っていた。まるで、今の自分は迷える羊だった。
これは、前世のカルマだろうか。それとも、スピリチュアルにハマり、欲深かった自分への罰だろうか。
あの元占い師のブログでは、スピリチュアルや占い、霊媒は罪とか書いてあった。聖書引用しながら、そう書いてあったし、これは、神様からの罰だろうか。無宗教のくせにスピリチュアルリーダーの一子は神のように崇め、依存していた。
もし、聖書やキリスト教でいう神がいれば、こんな状況の自分に怒っているのだろうか。そんな気もしてきて、頭には再び「死」の文字が浮かんでいた。一子に言われる通り、トイレ掃除や「ありがとう」を何回も唱え、幸せになるシーンを毎日イメージングしていたが、全部無駄だったのかもしれない。何百万円もかけて一子にセッションもして貰ったが、これも全部意味がなかったのだろう。
確かに死んだら、そんなメゾットは全部無駄だ。この時なぜか、アルコール中毒者や薬物中毒者の気持ちもわかってきた。自分もスピリチュアルに中毒のように依存していた。でも、そこから立ち上がる手段は、何一つ思いつかなかった。
こんなものにハマるのは、自業自得、自己責任なのだろう。スピリチュアルに依存して人生詰んだ人間の立ち上がり方など、どこにも書いてないし、頼るところも何一つわからなかった。
「やっぱり搾取されてるだけだったんだ……」
はっきりと、そう実感する。この世は、ピラミッド世界だ。自分は頂点ではなく、搾取され続ける奴隷だった。
しかし、これからどうしよう。漫画喫茶で食べたモーニングは、あまり美味しくなく、食べた気がしなかった。
時計を見たら十時過ぎだったが、どこに行くべきか。しばらく駅の近くにある公園のベンチに座り、考えていた。
空は青く、麗らかな春だった。天気はこんなに良いのに、全く気分は晴れない。むしろ、どんどん闇深くなっていくようだった。
スマートフォンには、何研か通知が届いていたが、全部スピリチュアル関係のお知らせだった。一子からセミナーを開くという情報もあったが、今は、参加する気分になれない。
思えば、スピリチュアルも成功している人は一握りで、自分のように不幸になっている人が圧倒的に多そうだった。ネットでちょっと調べても、引き寄せジプシーとか、願いが叶わなかった人の情報が山のように出てくる。スピリチュアルで有名なメゾットの引き寄せの法則も、全員に当てはまる真理というか法則とは言い切れない気がする。むしろ、人によってだいぶ結果に差があり、その格差もえぐいぐらいだった。ピラミッド型の世界じゃないかと思ったりする。
何か閃きそうな気がして、真琴は昨日見た元占い師のブログを再び見てみた。
そこでは、スピリチュアル、神社仏閣、カルト宗教で願いを叶えようとしても、多くの人間は搾取される側に行き、エネルギーだけを吸い取られるとあった。そんな搾取される側のエネルギーで、カルト教祖や一部の金持ち、スピリチュアルリーダーだけが栄えるシステムとある。エネルギーというと、非科学的だが、スピリチュアル好きだった真琴は、妙にしっくりきてしまった。エネルギーというか、人間が何かを信じたり、何か拝む気持ちは、想像以上に力があるんじゃないだろうか。神社に行って隣で拝んでいる人を見ると、その熱心さに圧倒された事もあった。
そのエネルギーを搾取されているだけだとしたら、今の状況は色々と納得してしまった。
しかし、そんな事を考えていたら空腹を覚えた。漫画喫茶で食べたモーニングは食べた気がしないし、腹がなる。
とりあえず、近くにあるコンビニで何か買おうと思ったが、貯金額が頭にちらつき、レジに持っていく事ができなかった。
パンやおにぎり一個ぐらい買えるだけのお金はあるのに、何故か怖くなって買う事ができない。
他のコンビニにも向かってみたが、身体がこわばり、手が動かなかった。
そんな事をしながら、駅の近くから住宅街を彷徨っていた。まるで、今の自分は迷える羊だった。
これは、前世のカルマだろうか。それとも、スピリチュアルにハマり、欲深かった自分への罰だろうか。
あの元占い師のブログでは、スピリチュアルや占い、霊媒は罪とか書いてあった。聖書引用しながら、そう書いてあったし、これは、神様からの罰だろうか。無宗教のくせにスピリチュアルリーダーの一子は神のように崇め、依存していた。
もし、聖書やキリスト教でいう神がいれば、こんな状況の自分に怒っているのだろうか。そんな気もしてきて、頭には再び「死」の文字が浮かんでいた。一子に言われる通り、トイレ掃除や「ありがとう」を何回も唱え、幸せになるシーンを毎日イメージングしていたが、全部無駄だったのかもしれない。何百万円もかけて一子にセッションもして貰ったが、これも全部意味がなかったのだろう。
確かに死んだら、そんなメゾットは全部無駄だ。この時なぜか、アルコール中毒者や薬物中毒者の気持ちもわかってきた。自分もスピリチュアルに中毒のように依存していた。でも、そこから立ち上がる手段は、何一つ思いつかなかった。
こんなものにハマるのは、自業自得、自己責任なのだろう。スピリチュアルに依存して人生詰んだ人間の立ち上がり方など、どこにも書いてないし、頼るところも何一つわからなかった。
「やっぱり搾取されてるだけだったんだ……」
はっきりと、そう実感する。この世は、ピラミッド世界だ。自分は頂点ではなく、搾取され続ける奴隷だった。