番外編短編・ツォップ
文字数 715文字
月宮麻里亜は、わけあって元シスターの女性だった。ずっとフランスの修道院生活をしていたが、事情があり日本に帰ってきた。
あまり仲良くなかった妹とも和解し、来月から再びフランスの修道院に帰る予定だった。その前に日本の美味しい料理を楽しみたく、特にパン屋巡りをしていた。
もう五十過ぎの麻里亜だったが、こうしてパン屋巡りをしていると、生き生きとした目になっていた。
今日は穂麦市にある福音ベーカリーというパン屋にきていた。シスター中間からの噂で聞いたパン屋で、どうやらクリスチャンが経営しているらしい。確かに店内には聖書の御言葉の色紙などが飾られ、種無しパンも売っていた。
「あら、ツォップも売ってる!」
麻里亜は大興奮で、ツォップをトレイに乗せる。このパンは、カトリックやユダヤ教徒が安息日に食べる三つ編み状のパンだった。麻里亜も修道院で食べていたので、懐かしい。
「お客様、いらっしゃいませ」
そこに店員に声をかけられた。ふわふわの栗毛に色素が薄い王子様タイプのイケメンだった。クリスチャンでイケメンなんて誇り高い。神様が綺麗に容姿も組み立てたと思うと、麻里亜の胸はキュンとしてしまう。
「ツォップは、旦那さんが死んだ奥さんが備えるパンでもあったらしいですね」
「へえ、さすが店員さん。詳しいのね。でも私は、そういった結婚には興味はないわ。おそらく一生。もう、おばあちゃんです」
ここで、なぜかイケメン店員は穏やかに笑っていた。
「そんな事ないです。あなたは美しいです。聖書にも書いてありましたよ」
「雅歌ね……」
店員の甘い声を聞きながら、頬が少し熱ってしまうが、これは更年期障害だろうか。いや、もう少し糖分がある現象に思えて仕方なかった。
あまり仲良くなかった妹とも和解し、来月から再びフランスの修道院に帰る予定だった。その前に日本の美味しい料理を楽しみたく、特にパン屋巡りをしていた。
もう五十過ぎの麻里亜だったが、こうしてパン屋巡りをしていると、生き生きとした目になっていた。
今日は穂麦市にある福音ベーカリーというパン屋にきていた。シスター中間からの噂で聞いたパン屋で、どうやらクリスチャンが経営しているらしい。確かに店内には聖書の御言葉の色紙などが飾られ、種無しパンも売っていた。
「あら、ツォップも売ってる!」
麻里亜は大興奮で、ツォップをトレイに乗せる。このパンは、カトリックやユダヤ教徒が安息日に食べる三つ編み状のパンだった。麻里亜も修道院で食べていたので、懐かしい。
「お客様、いらっしゃいませ」
そこに店員に声をかけられた。ふわふわの栗毛に色素が薄い王子様タイプのイケメンだった。クリスチャンでイケメンなんて誇り高い。神様が綺麗に容姿も組み立てたと思うと、麻里亜の胸はキュンとしてしまう。
「ツォップは、旦那さんが死んだ奥さんが備えるパンでもあったらしいですね」
「へえ、さすが店員さん。詳しいのね。でも私は、そういった結婚には興味はないわ。おそらく一生。もう、おばあちゃんです」
ここで、なぜかイケメン店員は穏やかに笑っていた。
「そんな事ないです。あなたは美しいです。聖書にも書いてありましたよ」
「雅歌ね……」
店員の甘い声を聞きながら、頬が少し熱ってしまうが、これは更年期障害だろうか。いや、もう少し糖分がある現象に思えて仕方なかった。