第40話 燃える炭火とフォカッチャ(4)完

文字数 708文字

「茉莉花、ごめん」

 数日後、家のリビングで土下座をしている夫の姿があった。

 蒼に言われた通り、家で夫や不倫相手を祝福していた翌日、夫が事件に巻きこまれた。不倫相手がメンヘラ化し、ナイフで肩や腕を刺されてしまった。

 さすがに浮気性の夫も反省したようで、こうして土下座していた。ちなみに怪我は軽症で、今は病院から帰って来た状況だった。しばらく怪我の治療で通院したり、警察に事情を話す事になり、夫はすっかり憔悴していた。

「あと、仕事でまたアメリカ行くことになった」
「えー? また?」

 口では文句を言っていたが、実のところアメリカの空気は肌に合うので、ちょっと楽しみだったりした。韓国語の勉強は一時中断し、また英語の勉強を再開した方が良さそうだ。

「今度こそ、浮気はしないから。っていうか、不倫女ってメンヘラばっかりなんだよな……」
「どの口で言ってるの? っていうか、あなたがメンヘラホイホイかメンヘラ製造機なんじゃないの?」

 この後に及んでも不倫女の悪口を言う夫に呆れつつ、それも事実だと思う。

 探偵に、夫の過去の不倫相手のその後も調べてもらった。不倫女は、全員悲惨な状態だった。病気になったり、怪我したり、逆にパートナーに不倫されたり……。宗教やカルトにはウンザリしていたが、きっちりと復讐してくれた神様だけは居るのかもしれない。そう思うと、少し生きる希望も出て来た。

「うん、まあ、しょうがない。あなたの事は許す。この件は全部忘れる事にするわ。私も悪いところがいっぱいあったと思うし。あなた、ごめんね……」

 それにしても、アメリカに行ったらしばらく蒼の店に行けないではないか。その点はしばらく夫に文句を言い続けてしまった。
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登場人物紹介

天野蒼

不思議なパン屋の店員。その正体は天使で、神様から依頼された仕事を行う。根っからの社畜体質。天使の時の名前はマル。

ヒソプ

蒼の相棒の柴犬。

依田光

蒼が担当し、守っているクリスチャン。しかし、サンデークリスチャンで日曜以外は普通の女子高生。

知村紘一

蒼の後輩の天使。悪霊が出入りする門で警備をしている。人間界にいるの時は知村紘一という名前を持つ。

知村柊

蒼の後輩天使。人間界にいる時は知村柊という名前をもつ。

橋本瑠偉

後輩天使。人間の時の名前は橋本瑠偉。

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