第156話 祈りとホットクロスパン(1)
文字数 1,834文字
野村紫乃は、人一倍食にこだわりがあった。仕事もフード関連のライタティングや動画を作って稼いでいた。
元々動画サイトで、大食いの動画をあげていたが、それが何故か受けてしまい、ライティングの仕事はもちろん、企業とのコラボ企画をした事もある。
紫乃はま二十三歳と若く、容姿も良い事もプラスに動いていた。母親はアメリカ人でハーフ。日本人離れしたルックスでもあった。そのせいでいじめられた事もあるが、性格も日本人離れしていた。はっきりといじめにはNOと否定し、警察や弁護士にも相談に行き、ついにはいじめっ子から謝罪までさせていた。よくいえば気が強い。悪くいえば、主張が激しく、少々口の悪いところがあった。これでも本人は、父からよく怒られていたので、少しは矯正されていると思っているぐらいだった。
そんな紫乃の動画や文章は、歯に衣着せないところも受けていた。美味しくない料理には、はっきりと不味いと言い、どちらかと言えば大人しい国民性日本人には珍しく見えたようで、受けているところもあった。
最近は、田舎の汚い食堂などに行き、どれほど店が汚きて、味も不味いのかという動画や文を発表したら、かなりバズってしまった。
今日も、飽田市という関東の中核市にある弁当屋に行き、どれほど不味いのかレポートする予定だった。
飽田市は、駅前の北口は、新しいマンションや商業施設が達なら並んで綺麗だが、南口はパチンコ屋や占いの店、風俗もあり、なかなか怪しい雰囲気があった。
その弁当屋も南口のそばにあり、外観もボロくて汚らしかった。隣には高級食パンを売っている悪魔のパン屋という店もあった。そこは白い壁のおしゃれな店だったが、高級食パンブームも落ち着いているのか、閑古鳥が泣いていた。紫乃もここのパンを食べた事あるが、「背徳な罪な味」と謳っている割には、平凡だった。パンに袋に裏をよく読みと、人工甘味料やショートニングもいっぱい入っているようで、がっかりした気分になった。悪魔のパン屋の食パンも大して美味しくないという動画も作った事ありが、結構評判が良かった。ネットでも悪魔のパン屋乃経営者は評判が悪く嫌われているようだった。こんな店名だけに悪魔に魂を売って成功しているんじゃないかと囁かれていた。
それはともかく、紫乃は、悪魔のパン屋を横目で見つつ、汚い弁当屋に向かった。
「いらっしゃいませ」
店員は、お爺さんでなかなか愛想が悪い。二重マスクをしていて、紫乃に睨みつけてきた。
「あんた、毒舌のフード系の動画配信者だろ? 知ってるよ。どうせ、悪口書きに来たんだろ。そんなんで飯食えていいなー?」
店員は鋭く紫乃を睨んだ。薄々自分も嫌われているんじゃないかと気付いてはいたが、毒舌はネットで目立って金になりやすかった。アンチも多いが、彼らが動画を拡散してくれている面もある。不思議な事に、アンチが増えれば増えるほど再生回数が伸びたりしていた。毒舌な婚活カウンセラーもネットで話題になっていたが、人気になる理由もわかる。一言でいえば炎上商法というやつだろう。人間は嫉妬され、嫌われるほど成功できるのではないかと思ったりする。
「そんな、いいんじゃない。弁当買わせて?」
「ふん。まあ、買うぐらいだったらいいさ。しかし、もう二度とくるな」
店員はイライラした声を出しながらも、唐揚げ弁当を一つ売ってくれた。店構えは、ぼろぼろで、店員の指先も油で汚れていて、とても期待できる味ではなかったが、とりあえずネタは購入出来たようだった。弁当の包みからも油ギッシュな匂いがして、とても食べたい気分にはなれないが。
「隣の悪魔のパン屋も潰れるみたいだぜ。ネットでのハリボテ人気はいつまで続くかね?」
帰りぎわ、店員はそう言い残していた。やたらと挑発的だったが、今の紫乃は、仕事が順調で怖いもの知らずもある。それよりも、ネットちいう大海で、少しでも目立たなければという義務感もあった。自分のような配信者は山ほどいる。掃いて捨てられるほどいる。少しでも目立たないという焦りもあった。
猫の動画を配信するインフルエンサーが、思ったよりバズらなくなってきて猫を殺したというニュースも見たが、その気持ちだけはわかる。私生活を切り売りしたエッセイ漫画家も、バズらなくなり、作り話を描くようになって炎上していたが、その漫画家の気持ちだけもわかったりした。
バズる為には、手段を選んでられないというか、その為だったら、何でもしたくなる。
元々動画サイトで、大食いの動画をあげていたが、それが何故か受けてしまい、ライティングの仕事はもちろん、企業とのコラボ企画をした事もある。
紫乃はま二十三歳と若く、容姿も良い事もプラスに動いていた。母親はアメリカ人でハーフ。日本人離れしたルックスでもあった。そのせいでいじめられた事もあるが、性格も日本人離れしていた。はっきりといじめにはNOと否定し、警察や弁護士にも相談に行き、ついにはいじめっ子から謝罪までさせていた。よくいえば気が強い。悪くいえば、主張が激しく、少々口の悪いところがあった。これでも本人は、父からよく怒られていたので、少しは矯正されていると思っているぐらいだった。
そんな紫乃の動画や文章は、歯に衣着せないところも受けていた。美味しくない料理には、はっきりと不味いと言い、どちらかと言えば大人しい国民性日本人には珍しく見えたようで、受けているところもあった。
最近は、田舎の汚い食堂などに行き、どれほど店が汚きて、味も不味いのかという動画や文を発表したら、かなりバズってしまった。
今日も、飽田市という関東の中核市にある弁当屋に行き、どれほど不味いのかレポートする予定だった。
飽田市は、駅前の北口は、新しいマンションや商業施設が達なら並んで綺麗だが、南口はパチンコ屋や占いの店、風俗もあり、なかなか怪しい雰囲気があった。
その弁当屋も南口のそばにあり、外観もボロくて汚らしかった。隣には高級食パンを売っている悪魔のパン屋という店もあった。そこは白い壁のおしゃれな店だったが、高級食パンブームも落ち着いているのか、閑古鳥が泣いていた。紫乃もここのパンを食べた事あるが、「背徳な罪な味」と謳っている割には、平凡だった。パンに袋に裏をよく読みと、人工甘味料やショートニングもいっぱい入っているようで、がっかりした気分になった。悪魔のパン屋の食パンも大して美味しくないという動画も作った事ありが、結構評判が良かった。ネットでも悪魔のパン屋乃経営者は評判が悪く嫌われているようだった。こんな店名だけに悪魔に魂を売って成功しているんじゃないかと囁かれていた。
それはともかく、紫乃は、悪魔のパン屋を横目で見つつ、汚い弁当屋に向かった。
「いらっしゃいませ」
店員は、お爺さんでなかなか愛想が悪い。二重マスクをしていて、紫乃に睨みつけてきた。
「あんた、毒舌のフード系の動画配信者だろ? 知ってるよ。どうせ、悪口書きに来たんだろ。そんなんで飯食えていいなー?」
店員は鋭く紫乃を睨んだ。薄々自分も嫌われているんじゃないかと気付いてはいたが、毒舌はネットで目立って金になりやすかった。アンチも多いが、彼らが動画を拡散してくれている面もある。不思議な事に、アンチが増えれば増えるほど再生回数が伸びたりしていた。毒舌な婚活カウンセラーもネットで話題になっていたが、人気になる理由もわかる。一言でいえば炎上商法というやつだろう。人間は嫉妬され、嫌われるほど成功できるのではないかと思ったりする。
「そんな、いいんじゃない。弁当買わせて?」
「ふん。まあ、買うぐらいだったらいいさ。しかし、もう二度とくるな」
店員はイライラした声を出しながらも、唐揚げ弁当を一つ売ってくれた。店構えは、ぼろぼろで、店員の指先も油で汚れていて、とても期待できる味ではなかったが、とりあえずネタは購入出来たようだった。弁当の包みからも油ギッシュな匂いがして、とても食べたい気分にはなれないが。
「隣の悪魔のパン屋も潰れるみたいだぜ。ネットでのハリボテ人気はいつまで続くかね?」
帰りぎわ、店員はそう言い残していた。やたらと挑発的だったが、今の紫乃は、仕事が順調で怖いもの知らずもある。それよりも、ネットちいう大海で、少しでも目立たなければという義務感もあった。自分のような配信者は山ほどいる。掃いて捨てられるほどいる。少しでも目立たないという焦りもあった。
猫の動画を配信するインフルエンサーが、思ったよりバズらなくなってきて猫を殺したというニュースも見たが、その気持ちだけはわかる。私生活を切り売りしたエッセイ漫画家も、バズらなくなり、作り話を描くようになって炎上していたが、その漫画家の気持ちだけもわかったりした。
バズる為には、手段を選んでられないというか、その為だったら、何でもしたくなる。