第50話 反抗期の激辛カレーパン(1)
文字数 1,867文字
「え、来週私の誕生日なのに、二人とも海外出張なの」
依田家の広いリビングに光の声が響く。依田家は代々資産家であり、家のリビングは金持ちそのものだった。大きなシャンデリアがあり、壁には絵画も飾られていた。
テーブルも重厚で木のもので、どっしりとしている。基本的に海外で仕事をしている事が多い両親が久々に帰国し、一緒に夕飯を食べた後だった。
来週は光の誕生日だが、再び仕事で出かけるのだという。
「ちょっと、待ってよ。私の誕生日は無視?」
思わず口を尖らせる。家政婦の遠部香織が、食後の紅茶とクッキーを運んできたが、美味しいとは感じられなかった。
「一人娘の誕生日無視して仕事っておかしくない?」
比較的気の強い光は、ブーブー文句を言ってしまう。見た目は黒髪ロングがよく似合う清楚な女子高生だったが、かなり気が強い。いじめられている友達もよく助けていた。親友の美紅も、光がいじめっ子から助けた事がキッカケで仲良くなった。幸い今は、いじめも無く平和なクラスだったが、道で倒れている老人や電車の中での痴漢も放っておけない。正義感が強いのだ。
そんな光は、両親の影響もあり、クリスチャンになった。聖書を読むと、正義のヒーローの神様がかっこ良くてしょうがない。ただ、教会はなんとなく行きずらくなり、日曜日だけ礼拝に行くだけだった。他の日は祈りもしないし、聖書も読まない典型的なサンデークリスチャンになっていた。一応ミッションスクールの学園に通ってはいたが、他にクリスチャンも数人ぐらいしかいないし、だんだんとサンデークリスチャンになっていってしまった。別に光のようなタイプは珍しくない。
「そうは言ってもね、仕事なのよ」
母は少々呆れながらクッキーを齧っていた。仕事はで、美容家やメイクアップアーティストで見かけは三十代前半にしか見えない。いわゆる美魔女だった。
「ごめんよ、光。こればっかりは仕方ない」
父も母に同意していた。父は道楽で始めた健康食品会社が軌道にのり、主に海外で出店していた。両親ともクリスチャンで、SNSでは聖書の御言葉を引用しながら、キラキラした画像をあげていたが。
「わ、わかったわ」
両親そろって言われると、認めざるおえない。とりあえずここでは素直に対応し、自室の戻った。
確かに仕事だったら仕方ない。これは自分が我慢するしか無いだろう。同じクラスの織田春歌も両親が長期海外出張と言っていた。親友の美紅の両親も医者で、昨今の疫病で寝ずに働いているらしい。友達の両親は忙しい子も多い。それに自分は、お手伝いさんの香織さんがいるではないか。
誕生日祝いが無視されたぐらいで、どうって事ないじゃないか。しばらく光は気を強く保ち、再び海外に仕事に行く両親を見送っていた。
しかし、数日後。
両親のSNSを見たら、海外にある教会で奉仕活動をするお知らせが出ていた。よりによって光の誕生日の行うらしい。イースターイベントで、バザーを教会で開くらしい。
「はあ?」
これには光も納得できなかった。その時間があるなら、なぜ帰国して娘の誕生日を祝わないのか。順番が違うのではないだろうか。
同時にクリスチャンでもある両親の不信感がってきた。一緒にテレビを見ている時、キスシーンぐらでも教育に良くないと怒ったり、セクシー系の女優に対してあからさまに差別発言をしていた。一見いい人そうに見える両親だが、実際の行動を思い出すと、光の中で違和感が溜まっていく。
そんな光は、祈る事も聖書を読む事も、違和感を感じてしまい、全くやらなくなっていた。サンデークリスチャンといっても友達の危機には聖書を開いて祈ったりしたが、今はそんな気分になれなかったりする。
光の部屋にある聖書は、いつのまにか薄らとホコリが被るようになった。それを見ているのも罪悪感が刺激され、お手伝いの香織に掃除をするように頼んだ。
「光お嬢様、袋のパンを食べるのはやめましょう」
香織には、好物の袋に入ったカレーパン屋焼きそばパンを食べるのを止められ、さらにイライラとしてきた。
「香織さんもうるさい!」
元々気の強い光だったが、ついに反抗期に入ってしまった。
「お嬢様! なんてこと!」
香織は大変ショックを受けていたが、光は納得出来ない気持ちでいっぱいだった。
反抗期といっても髪は染めない。ピアスも開けない。両親やお手伝いへの反発だけなので、学校では優等生として通っているのが、タチが悪かった。友達の美紅や春歌は気付いてはいたが、腫れ物扱いされたりもして、ますます光の心は頑なになっていった。
依田家の広いリビングに光の声が響く。依田家は代々資産家であり、家のリビングは金持ちそのものだった。大きなシャンデリアがあり、壁には絵画も飾られていた。
テーブルも重厚で木のもので、どっしりとしている。基本的に海外で仕事をしている事が多い両親が久々に帰国し、一緒に夕飯を食べた後だった。
来週は光の誕生日だが、再び仕事で出かけるのだという。
「ちょっと、待ってよ。私の誕生日は無視?」
思わず口を尖らせる。家政婦の遠部香織が、食後の紅茶とクッキーを運んできたが、美味しいとは感じられなかった。
「一人娘の誕生日無視して仕事っておかしくない?」
比較的気の強い光は、ブーブー文句を言ってしまう。見た目は黒髪ロングがよく似合う清楚な女子高生だったが、かなり気が強い。いじめられている友達もよく助けていた。親友の美紅も、光がいじめっ子から助けた事がキッカケで仲良くなった。幸い今は、いじめも無く平和なクラスだったが、道で倒れている老人や電車の中での痴漢も放っておけない。正義感が強いのだ。
そんな光は、両親の影響もあり、クリスチャンになった。聖書を読むと、正義のヒーローの神様がかっこ良くてしょうがない。ただ、教会はなんとなく行きずらくなり、日曜日だけ礼拝に行くだけだった。他の日は祈りもしないし、聖書も読まない典型的なサンデークリスチャンになっていた。一応ミッションスクールの学園に通ってはいたが、他にクリスチャンも数人ぐらいしかいないし、だんだんとサンデークリスチャンになっていってしまった。別に光のようなタイプは珍しくない。
「そうは言ってもね、仕事なのよ」
母は少々呆れながらクッキーを齧っていた。仕事はで、美容家やメイクアップアーティストで見かけは三十代前半にしか見えない。いわゆる美魔女だった。
「ごめんよ、光。こればっかりは仕方ない」
父も母に同意していた。父は道楽で始めた健康食品会社が軌道にのり、主に海外で出店していた。両親ともクリスチャンで、SNSでは聖書の御言葉を引用しながら、キラキラした画像をあげていたが。
「わ、わかったわ」
両親そろって言われると、認めざるおえない。とりあえずここでは素直に対応し、自室の戻った。
確かに仕事だったら仕方ない。これは自分が我慢するしか無いだろう。同じクラスの織田春歌も両親が長期海外出張と言っていた。親友の美紅の両親も医者で、昨今の疫病で寝ずに働いているらしい。友達の両親は忙しい子も多い。それに自分は、お手伝いさんの香織さんがいるではないか。
誕生日祝いが無視されたぐらいで、どうって事ないじゃないか。しばらく光は気を強く保ち、再び海外に仕事に行く両親を見送っていた。
しかし、数日後。
両親のSNSを見たら、海外にある教会で奉仕活動をするお知らせが出ていた。よりによって光の誕生日の行うらしい。イースターイベントで、バザーを教会で開くらしい。
「はあ?」
これには光も納得できなかった。その時間があるなら、なぜ帰国して娘の誕生日を祝わないのか。順番が違うのではないだろうか。
同時にクリスチャンでもある両親の不信感がってきた。一緒にテレビを見ている時、キスシーンぐらでも教育に良くないと怒ったり、セクシー系の女優に対してあからさまに差別発言をしていた。一見いい人そうに見える両親だが、実際の行動を思い出すと、光の中で違和感が溜まっていく。
そんな光は、祈る事も聖書を読む事も、違和感を感じてしまい、全くやらなくなっていた。サンデークリスチャンといっても友達の危機には聖書を開いて祈ったりしたが、今はそんな気分になれなかったりする。
光の部屋にある聖書は、いつのまにか薄らとホコリが被るようになった。それを見ているのも罪悪感が刺激され、お手伝いの香織に掃除をするように頼んだ。
「光お嬢様、袋のパンを食べるのはやめましょう」
香織には、好物の袋に入ったカレーパン屋焼きそばパンを食べるのを止められ、さらにイライラとしてきた。
「香織さんもうるさい!」
元々気の強い光だったが、ついに反抗期に入ってしまった。
「お嬢様! なんてこと!」
香織は大変ショックを受けていたが、光は納得出来ない気持ちでいっぱいだった。
反抗期といっても髪は染めない。ピアスも開けない。両親やお手伝いへの反発だけなので、学校では優等生として通っているのが、タチが悪かった。友達の美紅や春歌は気付いてはいたが、腫れ物扱いされたりもして、ますます光の心は頑なになっていった。