第187話 再会

文字数 866文字

 昨日、俺が気にかけていたスピリチュアルリーダーの山田一子が店に来てくれた。ガッツリと悪魔、蛇と契約ができてしまい、俺も無理だろうと思っていたが、神様が一子を選んだらしい。

 どうやら聞く耳もありそうだったので、福音を伝える事にした。ただ、福音を伝えるのは天使ではなく、人間の仕事なので、隣の教会の牧師さんを呼び、一緒に福音を伝えた。

 一子は最初は半信半疑だったが、自分の罪に打ち砕かれ、号泣していた。

「私、何て事を……。スピリチュアルは人々を地獄に誘って、命や心を奪っていたんですね。詐欺師どころか、私は殺人犯です。それなのに神様は許してくれていたなんて。自分の為の死んだなんて……」

 泣きじゃきる一子は可哀想だったが、このステップは必ず踏む必要があるので、仕方がない。自分の罪がわかれば、福音もわかるので、最後には一子も笑顔を取り戻し、みんなで一緒にコロンバを分け合って食べた。

 めでたし、めでたしだ。

 その後、パスクワの羊が想像以上に人気が出てしまった為、神様からお菓子屋さんをやるように言われてしまった。場所は福音ベーカリーの側にある空き地で、姉妹店という扱いだった。こんなつもりではなかったが、天使は神様の仕事が出来ればそれで良いのだ。

 パン屋の方は、再び蒼が店員をする事になった。今も時々手伝ってくれてはいたが、人事異動の結果、再び戻ってくる事になった。

 引き続きの為、蒼が店にやってきた。ヒソプに再会して、嬉しそうだった。

「ヒソプ、元気だったかい。久しぶりだね!」

 蒼はヒソプの頭や顎を撫でていた。ヒソプも久々に蒼と再会できて、尻尾を振って喜んでいた。

「瑠偉も今まで店守ってくれて、ありがとうね」
「いえいえ。これから、お菓子屋の方の開店準備がありますから、大変ですよ」
「あんなにパスクワの羊が受けてしまったのは、想定外だったね。まあ、人間達に喜んでくれたなら、良しとしようか」
「わん!」

 蒼の言葉に同意するかのようにヒソプが吠える。

 さて、これからも色々と大変だろう。でも、神様の仕事が出来るのは、この上なく幸せだった。
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登場人物紹介

天野蒼

不思議なパン屋の店員。その正体は天使で、神様から依頼された仕事を行う。根っからの社畜体質。天使の時の名前はマル。

ヒソプ

蒼の相棒の柴犬。

依田光

蒼が担当し、守っているクリスチャン。しかし、サンデークリスチャンで日曜以外は普通の女子高生。

知村紘一

蒼の後輩の天使。悪霊が出入りする門で警備をしている。人間界にいるの時は知村紘一という名前を持つ。

知村柊

蒼の後輩天使。人間界にいる時は知村柊という名前をもつ。

橋本瑠偉

後輩天使。人間の時の名前は橋本瑠偉。

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