番外編短編・天使のパン
文字数 1,359文字
雲井理世は、穂麦市の住宅街を歩いていた。見た目は大人しそうな女子高生だが、ひょんな事もあり、最近は強くなってきた。
本当は、友達の環奈と一緒にパン屋の行く予定だったが、電車が止まったようで、理世が先に行く事になった。福音ベーカリーというパン屋で、どうやらクリスチャンが経営しているらしい。
教会の隣にパン屋があった。小さなパン屋で、小人でも住んでいそうな雰囲気もある。赤い屋根が可愛らしい。店の前では、柴犬も寝転んでいて、さらに可愛い雰囲気だった。おそらく看板犬だろう。
柴犬に誘われ、パン屋に入店する。クリスチャンが経営しているのは、確かのようで店の壁には、聖書の言葉が書かれたポストカードなども貼ってある。
中央にあるテーブルには、チョコレートフェアらしく、ココアのような甘い香りが漂っていた。チョココロンネ、パン・オ・ショコラ、チョコメロンパン、ミントチョコの食パンもある。クラッカーの様な薄いパンに、チョコレートがかかって入のもある。思わずカロリーの数値や体重計の数値が頭に浮かんでくる。こういったハイカロリーのパンは、悪魔のパンとも言うそうだが。
「理世ちゃん、今、悪魔のパンって思ったでしょ?」
「え! 何でわかったんですか? それに私の名前……」
「環奈ちゃんに聞いてたから」
「あー、なるほど!」
店員はイケメンだった。フワフワの栗毛や白い肌が印象的で、白いコックコートもよく似合ってる。
正体面の人と会うのは苦手だが、不思議な雰囲気もあり、友達の環奈の事を知っているようなので、緊張はしなくなっていた。
「悪魔のパンなんて言わないで。一つ一つ手作りしてるんだ」
「う、うん」
店員はちょっと泣きそうな顔だったので、理世も思わず頷く。
「でも、太るのは怖いなぁ。運動すればいい話だけど」
「大丈夫。うちのパンは、天使のパンだから、大丈夫」
ハッキリ断言する店員に、理世は首を傾げていた。
「言葉って力があるから。天使のパンだと宣言すれば、太らないよ。さらに神様に感謝して食べると、無毒にできる」
「えー? 本当?」
「逆に悪魔のパンとか言うから、余計な脂肪がつく気がするね。病名とかも、あんまり言わない方が良いよ。聖書にも書いてあるけど、言葉って強いんだよ。聖書では、神様=言葉でもあるし」
「そうなんだー」
「うん。別にスピリチュアルみたいに金持ちになりたいって言っても叶わないけど、人間が使う悪い言葉はほぼ呪いになるからねー」
理世も病名をつけられた事があるが、確かにその言葉の強さの縛られていた事は否定できない。母の知り合いも、闘病ブログや病人のエッセイを見て、体調悪くなった人もいるらしい。逆に小麦粉でできた薬を「飲んだら即効で元気になれる薬」と言われて食べたら、元気になった人もいるらしい。精神科医の自殺率が高いというのも、病気をイメージし、病名をよく知ってるせいではないか。確かに言葉には力があるのかもしれない。特に人の為に勇気づける為の言葉は、強い気もする。自分も一度病名はつけられていたが、もうその事は全部忘れようと思った。
「店員さん、この美味しそうな天使のパン、イートインで食べられる? 友達と待ち合わせしているんだ」
「オッケーだよ。美味しい天使のパンを召し上がれ」
店員は、花の咲くような笑顔を見せていた。
本当は、友達の環奈と一緒にパン屋の行く予定だったが、電車が止まったようで、理世が先に行く事になった。福音ベーカリーというパン屋で、どうやらクリスチャンが経営しているらしい。
教会の隣にパン屋があった。小さなパン屋で、小人でも住んでいそうな雰囲気もある。赤い屋根が可愛らしい。店の前では、柴犬も寝転んでいて、さらに可愛い雰囲気だった。おそらく看板犬だろう。
柴犬に誘われ、パン屋に入店する。クリスチャンが経営しているのは、確かのようで店の壁には、聖書の言葉が書かれたポストカードなども貼ってある。
中央にあるテーブルには、チョコレートフェアらしく、ココアのような甘い香りが漂っていた。チョココロンネ、パン・オ・ショコラ、チョコメロンパン、ミントチョコの食パンもある。クラッカーの様な薄いパンに、チョコレートがかかって入のもある。思わずカロリーの数値や体重計の数値が頭に浮かんでくる。こういったハイカロリーのパンは、悪魔のパンとも言うそうだが。
「理世ちゃん、今、悪魔のパンって思ったでしょ?」
「え! 何でわかったんですか? それに私の名前……」
「環奈ちゃんに聞いてたから」
「あー、なるほど!」
店員はイケメンだった。フワフワの栗毛や白い肌が印象的で、白いコックコートもよく似合ってる。
正体面の人と会うのは苦手だが、不思議な雰囲気もあり、友達の環奈の事を知っているようなので、緊張はしなくなっていた。
「悪魔のパンなんて言わないで。一つ一つ手作りしてるんだ」
「う、うん」
店員はちょっと泣きそうな顔だったので、理世も思わず頷く。
「でも、太るのは怖いなぁ。運動すればいい話だけど」
「大丈夫。うちのパンは、天使のパンだから、大丈夫」
ハッキリ断言する店員に、理世は首を傾げていた。
「言葉って力があるから。天使のパンだと宣言すれば、太らないよ。さらに神様に感謝して食べると、無毒にできる」
「えー? 本当?」
「逆に悪魔のパンとか言うから、余計な脂肪がつく気がするね。病名とかも、あんまり言わない方が良いよ。聖書にも書いてあるけど、言葉って強いんだよ。聖書では、神様=言葉でもあるし」
「そうなんだー」
「うん。別にスピリチュアルみたいに金持ちになりたいって言っても叶わないけど、人間が使う悪い言葉はほぼ呪いになるからねー」
理世も病名をつけられた事があるが、確かにその言葉の強さの縛られていた事は否定できない。母の知り合いも、闘病ブログや病人のエッセイを見て、体調悪くなった人もいるらしい。逆に小麦粉でできた薬を「飲んだら即効で元気になれる薬」と言われて食べたら、元気になった人もいるらしい。精神科医の自殺率が高いというのも、病気をイメージし、病名をよく知ってるせいではないか。確かに言葉には力があるのかもしれない。特に人の為に勇気づける為の言葉は、強い気もする。自分も一度病名はつけられていたが、もうその事は全部忘れようと思った。
「店員さん、この美味しそうな天使のパン、イートインで食べられる? 友達と待ち合わせしているんだ」
「オッケーだよ。美味しい天使のパンを召し上がれ」
店員は、花の咲くような笑顔を見せていた。