番外編短編・パン・オ・ショコラ
文字数 1,657文字
佐藤環奈は、生粋のヲタクだった。クリスチャンになる前は、ゲーム、漫画、ラノベ三昧の日々を送っていたが、悔い改めた。
色々あり、来年は大学受験もあるし、そういった娯楽は断捨離した。
ただ、今日は大好きなライトノベル作家・佐々木マロン先生のサイン会があり、争奪戦を乗り越え、整理券をゲットした。
家からは遠いが、佐々木マロン先生の地元である穂麦市の駅に降り立っていた。この駅ビルの本屋で午後の二時からサイン会が行われる。
その前に、環奈は穂麦市の住宅街にはいり、福音ベーカリーに向かう。佐々木マロン先生のお気に入りの店らしく、時々SNSで画像が上がっていた。マロン先生のSNSによると、店主はイケメンらしいのも気になる。また、店の名前からしてクリスチャンが経営しているだろうから、それも気になる。そういえば教会で福音ベーカリーの噂は聞いた事があった。パンをいくつか買い、マロン先生のお土産として持っていくのも良いだろう。
福音ベーカリーは、教会のそばにあり、益々クリスチャンが経営しているパン屋という確信を強めた。
可愛らしい雰囲気のパン屋で、店の前のベンチには、柴犬がいた。おそらく看板犬だろう。可愛い柴犬に誘われるように、環奈は福音ベーカリーに足を踏み入れた。
「環奈ちゃん!」
店に入ると、店員に満面の笑みで出迎えられた。確かにイケメンだった。この店員は色素薄めでビジュアル系バンドマンのような雰囲気もある。ただ、体格はよく、細マッチョだった。環奈はどちらかといえば、ジャニーズ風のイケメンが好みだが、うっかり目の保養にしていた。自分の名前を知っているのは謎だが、最近牧師である父のYouTubeに出演した事もあったので、自分を知っていてもおかしくはなかった。ますます、この店員はクリスチャンという確信を強めた。
パンも種無しパンやツォップもある。どう見てもキリスト教関係者だった。
「もしかしてうちの牧師のYouTubeみた?」
「うん、みたよ。映画やアニメから聖書を解説するって面白いね。私も『進撃の巨人』が好きだよ」
店員は、漫画やアニメも詳しく、しばらく二人でヲタクトークを繰り広げてしまった。
「でも、クリスチャンなのに漫画やラノベ好きなのって恥ずかしい。よく、厳しい教会員の人の注意されるんだよね」
店員の気さくな態度に愚痴がこぼれる。パン屋の中央にあるテーブルには、いかにも太りそうな甘い系のパンもいっぱい陳列してあった。メロンパンやあんぱん、クリームパンはもちろん、チョコとデニッシュ生地が美味しいパン・オ・ショコラもある。バターの甘い香りに明らかに誘惑されていた。
「まあ、エンタメを偶像崇拝しちゃダメだけど、適度に楽しむぶんにはいいよ。漫画も神様のメッセージが隠れてるからね」
「え? 本当?」
「うん。神様は公平で平等だから、どんなメディアに触れていても、カンの良い人は気付けるようにしてるんだよ。もちろん、作者や編集部の人も全く気づいてない。無意識にインスピレーション受けてる事だけど」
「そっかー。そう思えば、別に漫画自体が悪いわけじゃないよね。漫画じゃなくて、偶像にして神様の代わりにしちゃう利用者側のの心が悪いんだね」
この甘くてハイカロリーなパン・オ・ショコラも別に悪魔のパンじゃない。いつも野菜と玄米食で、運動をしている人が食べても、特に健康被害は無いだろう。こういったハイカロリーの食べ物は、誕生日や記念日など特別な日に食べるものなのかもしれない。漫画やライトノベルもそうで、基本的に毎日食べるものは聖書の御言葉なのだろうと気づく。
「店員さん、実はこれから佐々木マロン先生のサイン会なの。美味しいパンをお土産に持っていきたいんだけど、いい?」
「オッケー。良子さん、いやマロン先生もこのパン屋の常連で、特にパン・オ・ショコラが好きだから、これをつめよう。サイン会なんてすごいね。今日は記念日だから、カロリーは忘れてしまおう」
店員は、トレイに甘くて美味しいパン・オ・ショコラを盛り付けていた。
色々あり、来年は大学受験もあるし、そういった娯楽は断捨離した。
ただ、今日は大好きなライトノベル作家・佐々木マロン先生のサイン会があり、争奪戦を乗り越え、整理券をゲットした。
家からは遠いが、佐々木マロン先生の地元である穂麦市の駅に降り立っていた。この駅ビルの本屋で午後の二時からサイン会が行われる。
その前に、環奈は穂麦市の住宅街にはいり、福音ベーカリーに向かう。佐々木マロン先生のお気に入りの店らしく、時々SNSで画像が上がっていた。マロン先生のSNSによると、店主はイケメンらしいのも気になる。また、店の名前からしてクリスチャンが経営しているだろうから、それも気になる。そういえば教会で福音ベーカリーの噂は聞いた事があった。パンをいくつか買い、マロン先生のお土産として持っていくのも良いだろう。
福音ベーカリーは、教会のそばにあり、益々クリスチャンが経営しているパン屋という確信を強めた。
可愛らしい雰囲気のパン屋で、店の前のベンチには、柴犬がいた。おそらく看板犬だろう。可愛い柴犬に誘われるように、環奈は福音ベーカリーに足を踏み入れた。
「環奈ちゃん!」
店に入ると、店員に満面の笑みで出迎えられた。確かにイケメンだった。この店員は色素薄めでビジュアル系バンドマンのような雰囲気もある。ただ、体格はよく、細マッチョだった。環奈はどちらかといえば、ジャニーズ風のイケメンが好みだが、うっかり目の保養にしていた。自分の名前を知っているのは謎だが、最近牧師である父のYouTubeに出演した事もあったので、自分を知っていてもおかしくはなかった。ますます、この店員はクリスチャンという確信を強めた。
パンも種無しパンやツォップもある。どう見てもキリスト教関係者だった。
「もしかしてうちの牧師のYouTubeみた?」
「うん、みたよ。映画やアニメから聖書を解説するって面白いね。私も『進撃の巨人』が好きだよ」
店員は、漫画やアニメも詳しく、しばらく二人でヲタクトークを繰り広げてしまった。
「でも、クリスチャンなのに漫画やラノベ好きなのって恥ずかしい。よく、厳しい教会員の人の注意されるんだよね」
店員の気さくな態度に愚痴がこぼれる。パン屋の中央にあるテーブルには、いかにも太りそうな甘い系のパンもいっぱい陳列してあった。メロンパンやあんぱん、クリームパンはもちろん、チョコとデニッシュ生地が美味しいパン・オ・ショコラもある。バターの甘い香りに明らかに誘惑されていた。
「まあ、エンタメを偶像崇拝しちゃダメだけど、適度に楽しむぶんにはいいよ。漫画も神様のメッセージが隠れてるからね」
「え? 本当?」
「うん。神様は公平で平等だから、どんなメディアに触れていても、カンの良い人は気付けるようにしてるんだよ。もちろん、作者や編集部の人も全く気づいてない。無意識にインスピレーション受けてる事だけど」
「そっかー。そう思えば、別に漫画自体が悪いわけじゃないよね。漫画じゃなくて、偶像にして神様の代わりにしちゃう利用者側のの心が悪いんだね」
この甘くてハイカロリーなパン・オ・ショコラも別に悪魔のパンじゃない。いつも野菜と玄米食で、運動をしている人が食べても、特に健康被害は無いだろう。こういったハイカロリーの食べ物は、誕生日や記念日など特別な日に食べるものなのかもしれない。漫画やライトノベルもそうで、基本的に毎日食べるものは聖書の御言葉なのだろうと気づく。
「店員さん、実はこれから佐々木マロン先生のサイン会なの。美味しいパンをお土産に持っていきたいんだけど、いい?」
「オッケー。良子さん、いやマロン先生もこのパン屋の常連で、特にパン・オ・ショコラが好きだから、これをつめよう。サイン会なんてすごいね。今日は記念日だから、カロリーは忘れてしまおう」
店員は、トレイに甘くて美味しいパン・オ・ショコラを盛り付けていた。