第179話 トルチリオーネと誘惑(2)
文字数 1,400文字
絵名は、ある関東にある飽田市にいた。ここでは自分が出店した高級路線のパン屋があった。店名は悪魔のパン屋という。絵名の計画では、今も行列ができ、ネットでも評判が良いはずだったが、現実はそうではない。店は潰れ、違法な薬物が混入されているという噂も流れていた。全く事実では無い噂だが、訂正してみ逆にデマが広がり、お手上げ状態だった。
最近はビジネスに関してやればやるほど、逆効果になり、一子にも休養するよう命令されていた。最初は一子とは対等というか、姉妹みたいな関係だったが、今はなぜかはっきりと上下関係ができていた。絵名が下で、一子が上という関係で、逆らえなくなっていた。
今日は飽田市にいるには、出店してた店舗を見る訳ではない。一子に言われた通りの事を実行する為に来た。今の絵名は、一子によると、「波動が悪い、エネルギーが枯れている」らしいので、神社に行けという。神社はどこでも良いわけではなく、ご利益のある神社に参拝する事になった。それが飽田市にある大蛇神社だった。聞いた事もない神社だったが、絵名は藁をも掴む思いだった。
木々に覆われて、人気も無い怪しい神社だったが、絵名は無視して、鳥居をくぐる。鳥居の色は禿げ、色も悪くなっていたが、一子が効果あると言っていたのだから、行くしかない。
思えば、ビジネスは努力で稼げる部分ももちろん多かったが、それ以外の「運」みたいなものも大きく影響していた。どうも見えない何かの影響も感じ、事業主や経営者がカルトやスピリチュアルにハマっていく理由もわかる気がした。町中の小さな飲食店のも神棚があったりする。あれも何かリターンがあるからやっているのだろう。小さな飲食店とはいえ経営者だ。ふわふわしたお花畑スピリチュアルファンのような感覚でやっているとは、思えなかった。
神社の中は、想像以上に人気がない。参道の端っこを歩くと、砂利を踏み締める音がやけに大きく響いていた。手水舎で手を洗い、口もゆすいだ。これも一子からのアドバイスだった。きちんと作法を守る事で、神社の神様に願いを聞いて貰いやすくなるらしい。
社務所には無人にようだった。お守りやお札の販売所もしまっていた。今の時間は昼間のはずだが、人気がなく、絵名は怖くもなってきたが、一子の命令に逆らえない。
言われた通りに本殿に向かい、鈴を鳴らし、賽銭箱に十万円を入れた。これも一子からの命令で、清水の舞台から飛び降りる気分で十万円を賽銭箱に入れると良いらしい。
一子は目を閉じ、手を重ね、心の中で何度も願いを語る。
「ふう……」
願掛けが終わり、ふと頭を上げると、しめ縄が見えた。しめ縄は、二匹の蛇が絡まっているようにも見え、絵名は思わず後退りしていた。手首につけれているパワーストーンも揺れて、カチっと小さな音をたてた。このパワーストーンも、一子の波動が注入された特別なものだった。十万円もしたが、これをつけてから、仕事のチャンスが増えたので、今も外せない。
『絵名』
願掛けがも終わったので、もう帰ろうかと思った時だった。
どこからか声が聞こえたと思ったが、目の前に蛇がいた。白くて手のひらサイズの蛇だったが、なぜか会話ができる蛇だった。
くねくねした体や赤い目も気持ち悪いが、なぜ話せるの?
絵名は少し背を屈めて、蛇に向き合う。もしかして、願いが叶う前兆だと思い、ファンタジー展開も普通に受け入れていた。
最近はビジネスに関してやればやるほど、逆効果になり、一子にも休養するよう命令されていた。最初は一子とは対等というか、姉妹みたいな関係だったが、今はなぜかはっきりと上下関係ができていた。絵名が下で、一子が上という関係で、逆らえなくなっていた。
今日は飽田市にいるには、出店してた店舗を見る訳ではない。一子に言われた通りの事を実行する為に来た。今の絵名は、一子によると、「波動が悪い、エネルギーが枯れている」らしいので、神社に行けという。神社はどこでも良いわけではなく、ご利益のある神社に参拝する事になった。それが飽田市にある大蛇神社だった。聞いた事もない神社だったが、絵名は藁をも掴む思いだった。
木々に覆われて、人気も無い怪しい神社だったが、絵名は無視して、鳥居をくぐる。鳥居の色は禿げ、色も悪くなっていたが、一子が効果あると言っていたのだから、行くしかない。
思えば、ビジネスは努力で稼げる部分ももちろん多かったが、それ以外の「運」みたいなものも大きく影響していた。どうも見えない何かの影響も感じ、事業主や経営者がカルトやスピリチュアルにハマっていく理由もわかる気がした。町中の小さな飲食店のも神棚があったりする。あれも何かリターンがあるからやっているのだろう。小さな飲食店とはいえ経営者だ。ふわふわしたお花畑スピリチュアルファンのような感覚でやっているとは、思えなかった。
神社の中は、想像以上に人気がない。参道の端っこを歩くと、砂利を踏み締める音がやけに大きく響いていた。手水舎で手を洗い、口もゆすいだ。これも一子からのアドバイスだった。きちんと作法を守る事で、神社の神様に願いを聞いて貰いやすくなるらしい。
社務所には無人にようだった。お守りやお札の販売所もしまっていた。今の時間は昼間のはずだが、人気がなく、絵名は怖くもなってきたが、一子の命令に逆らえない。
言われた通りに本殿に向かい、鈴を鳴らし、賽銭箱に十万円を入れた。これも一子からの命令で、清水の舞台から飛び降りる気分で十万円を賽銭箱に入れると良いらしい。
一子は目を閉じ、手を重ね、心の中で何度も願いを語る。
「ふう……」
願掛けが終わり、ふと頭を上げると、しめ縄が見えた。しめ縄は、二匹の蛇が絡まっているようにも見え、絵名は思わず後退りしていた。手首につけれているパワーストーンも揺れて、カチっと小さな音をたてた。このパワーストーンも、一子の波動が注入された特別なものだった。十万円もしたが、これをつけてから、仕事のチャンスが増えたので、今も外せない。
『絵名』
願掛けがも終わったので、もう帰ろうかと思った時だった。
どこからか声が聞こえたと思ったが、目の前に蛇がいた。白くて手のひらサイズの蛇だったが、なぜか会話ができる蛇だった。
くねくねした体や赤い目も気持ち悪いが、なぜ話せるの?
絵名は少し背を屈めて、蛇に向き合う。もしかして、願いが叶う前兆だと思い、ファンタジー展開も普通に受け入れていた。