第160話 忍耐とプレスニッツ(1)
文字数 1,519文字
安村恵は、飽きっぽくて、すぐ三日坊主になってしまう自分に悩んでいた。もう小学六年生で、中には中学受験のために塾に通ったり、英会話教室に通うものもいたが、恵は、興味はなかった。むしろ、ピアノ教室に通っているが、バイエルの難しい箇所に躓き、すっかり飽きていた。辞めたいのが本音だが、母に無理やり頼み込んで教室に通い始めた経緯もあり、言い出せずににた。
「え? 恵ってもうピアノ教室やめたの?」
友達の佐々木桃果は、その事を話すと、かなりビックリしていた。大きなリスのような黒い目お見開いていた。
今日は、桃果と二人で学校から帰っていた。通学路は、住宅街にあり、時々老人とすれ違うだけで静かだった。この街、穂麦市の駅前は商業施設や新しいマンションができて栄えているが、この辺りの住宅街は静かだった。老人住んでいそうな古い日本家屋も多い。たまに貧乏そうな家もあり、玄関の扉や塀に政治家のポスターが貼っているのが見える。カルトと繋がっている政治家のポスターで、そんなものを見ていると、恵は宗教に良い印象はなかった。
春の風は心地よかったが、二人で歩いていると、汗ばんできた。ランドセルが重くて仕方ない。中学生になったら、この重いカバンとサヨナラできそうなのが、嬉しくも感じる。
「っていうか、恵、本当に飽きっぽいよね。アイドルや芸能人だって、すぐハマって三日で飽きてる事多いし、図書館で借りた本も最後まで読まないで返すのとか繰り返してるし。コスパも悪いし、もったいなくない?」
桃果は、現実的でしっかりした子供だった。中学受験も親に勧められていたらしいが、偏差値の低めの私立中学に行くよりは、公立行く方が後々コスパが良いとか言っていた。今は、今後のAIが伸びてくるだろうし、そんな社会でもコスパの良い資格を調べているらしい。恵と違ってしっかりした子供だった。
「それって、あなたの感想ですよね?」
今、クラスで流行っている言葉を言ってみる。論破する時は、この言葉を言えば一発らしい。
「ちょ、ひろゆきの言葉なんて、言わないでよ。大人にこれ言ったらダメだよ。怒られるから」
「うん、わかってるけどさ、この言葉言いたくなるよねー」
「うわー、恵は可愛くない子供だ」
そんな下らない話をしながら、鼻にふわっと良い香りが届いた。
「何か良い臭いしない?」
「あ、たぶん福音ベーカリーだよ。行ってにようよ」
「福音ベーカリー?」
桃果は、この香りについて知っているようだった。桃果に手を引かれて向かった先には、確かに福音ベーカリーちというパン屋があった。赤い屋根でクリーム色の壁の小さな店のようだったが、こんな店今まであっただろうか。恵は、思わず首を傾げていた。
「桃果、このパン屋何?」
「イケメンがやってるパン屋だよ」
桃果は、目を細めて恵の耳元で囁いた。いつになく興奮しているようで、桃果の頬は、赤くなっていた。
「前まではイケメン兄弟がやってたんだけど、今はサブカル系の寡黙イケメンが運営してるのよ」
「へー。桃果はイケメン好きだもんね」
桃果は去年、転校生の野中翔というイケメンに片想いしているようだった。しかし、翔は全く勉強ができず、女子から宿題やノートをいつも写しているのがバレ総スカンをくらっていた。今は、翔はバカなイケメンとしてお笑いキャラになっている。恵はそれはそれで良いと思うが、桃果は失望中のようだった。
「とりあえず、入ってみようよ」
なぜかモジモジしている桃果の手を引き、福音ベーカリーというパン屋に入る事にした。三日坊主で飽きっぽい恵だが、とにかくやってみよう精神はあった。飽きっぽくて三日坊主である事に悩んではいたが、こういう自分は、嫌いではなかった。
「え? 恵ってもうピアノ教室やめたの?」
友達の佐々木桃果は、その事を話すと、かなりビックリしていた。大きなリスのような黒い目お見開いていた。
今日は、桃果と二人で学校から帰っていた。通学路は、住宅街にあり、時々老人とすれ違うだけで静かだった。この街、穂麦市の駅前は商業施設や新しいマンションができて栄えているが、この辺りの住宅街は静かだった。老人住んでいそうな古い日本家屋も多い。たまに貧乏そうな家もあり、玄関の扉や塀に政治家のポスターが貼っているのが見える。カルトと繋がっている政治家のポスターで、そんなものを見ていると、恵は宗教に良い印象はなかった。
春の風は心地よかったが、二人で歩いていると、汗ばんできた。ランドセルが重くて仕方ない。中学生になったら、この重いカバンとサヨナラできそうなのが、嬉しくも感じる。
「っていうか、恵、本当に飽きっぽいよね。アイドルや芸能人だって、すぐハマって三日で飽きてる事多いし、図書館で借りた本も最後まで読まないで返すのとか繰り返してるし。コスパも悪いし、もったいなくない?」
桃果は、現実的でしっかりした子供だった。中学受験も親に勧められていたらしいが、偏差値の低めの私立中学に行くよりは、公立行く方が後々コスパが良いとか言っていた。今は、今後のAIが伸びてくるだろうし、そんな社会でもコスパの良い資格を調べているらしい。恵と違ってしっかりした子供だった。
「それって、あなたの感想ですよね?」
今、クラスで流行っている言葉を言ってみる。論破する時は、この言葉を言えば一発らしい。
「ちょ、ひろゆきの言葉なんて、言わないでよ。大人にこれ言ったらダメだよ。怒られるから」
「うん、わかってるけどさ、この言葉言いたくなるよねー」
「うわー、恵は可愛くない子供だ」
そんな下らない話をしながら、鼻にふわっと良い香りが届いた。
「何か良い臭いしない?」
「あ、たぶん福音ベーカリーだよ。行ってにようよ」
「福音ベーカリー?」
桃果は、この香りについて知っているようだった。桃果に手を引かれて向かった先には、確かに福音ベーカリーちというパン屋があった。赤い屋根でクリーム色の壁の小さな店のようだったが、こんな店今まであっただろうか。恵は、思わず首を傾げていた。
「桃果、このパン屋何?」
「イケメンがやってるパン屋だよ」
桃果は、目を細めて恵の耳元で囁いた。いつになく興奮しているようで、桃果の頬は、赤くなっていた。
「前まではイケメン兄弟がやってたんだけど、今はサブカル系の寡黙イケメンが運営してるのよ」
「へー。桃果はイケメン好きだもんね」
桃果は去年、転校生の野中翔というイケメンに片想いしているようだった。しかし、翔は全く勉強ができず、女子から宿題やノートをいつも写しているのがバレ総スカンをくらっていた。今は、翔はバカなイケメンとしてお笑いキャラになっている。恵はそれはそれで良いと思うが、桃果は失望中のようだった。
「とりあえず、入ってみようよ」
なぜかモジモジしている桃果の手を引き、福音ベーカリーというパン屋に入る事にした。三日坊主で飽きっぽい恵だが、とにかくやってみよう精神はあった。飽きっぽくて三日坊主である事に悩んではいたが、こういう自分は、嫌いではなかった。