第127話 番外編短編・市民祭りとパンの屋台

文字数 1,155文字

 雨宮雪乃、いや菓野雪乃は夫の為に飽田市に公園に向かっていた。

 最近結婚し、苗字が変わったので慣れない。雪乃は在宅のライターや小説を書く仕事、夫はフードトラックの店長をしている。仕事柄、なかなか夫との時間が取れない時があるが、今日は飽田市という土地の公園で市民祭りが行われる。

 雪乃が住んでいる土地から飽田市は、少し遠いが、夫の仕事柄、依頼されるとどこでも行くらしい。一時期はコロナを怖がり、メンヘラ男にもなっていた事もあったが、雪乃の励ましにより、普通の男になった。もうお互いいい歳なので、子供などは望んでいないが、仲良く新婚生活を送っていた。

 飽田市の公園は、フードトラックだけでなく、各種屋台もいっぱい出ていた。ご当地キャラクターやご当地アイドルのステージもあり、今は冬とは思えないぐらい賑やかだった。空も晴れ、お祭りのような天気と言って良いだろう。

 雪乃は人混みの中を歩きながら、夫のフードトラックを探す。今日はバレンタインに近いのでチョコレート菓子をいっぱい売るとか言っていたが。人が多く、夫のミントグリーンのフードトラックが、なかなか見つけられない。

「お客さん!」

 しうこうしているうちに、ある屋台の店員から声をかけられた。

 福音ベーカリーというパン屋の舞台だった。店員は四人いたが、まるでアイドルのようにイケメン軍団だった。

 色素薄めでふわふわの黒髪の子、幼い少年ぽおい雰囲気の子、トラックの運転手のようながたいのいい爽やか系、サブカル系もやし男も全員イケメンで、雪乃はドギマギとしてきた。

 慌てて屋台にあるパンに目をやる。お祭りらしく、カップに入ったドーナツホールや、片手で食べられるチェロスやドーナツ、ベーグルなども並んでいた。デニッシュやジャムパンなどの甘い系、カレーパンやピザパンなどの惣菜パンも美味しそうだった。狭い屋台ながら、パン祭りといっていい華やかさがある。

 夫のフードトラックで売られているメニューに負けていない。

 ここは一つ、何かの参考になるかもしれないと、ドーナツやカレーパンを買ってみた。

「雪乃〜、あのイケメン軍団のパン屋で油売ってなかった?」

 夫のフードトラックに向かい、あのパン屋の事を話そうと思ったが、なぜか自分の行動を知っていた。

「えー、そう?」
「嫉妬しちゃうな! よし、僕もイケメンになろうかな!」

 夫は、そんな事を言いながら、チョコレートドーナツやパイを作りフードトラックで販売していた。

 そんな夫の横顔を見ながら、雪乃は苦笑していた。

 客足が少し途絶えていた夫の店だったが、また子供や老人などの客が行列を作っていた。雪乃は、邪魔になると思い、そっとフードトラックから離れ、別に屋台もみてみる事にした。

 今日はお祭りだ。滅多に会えない味も楽しみたくなってきた。
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登場人物紹介

天野蒼

不思議なパン屋の店員。その正体は天使で、神様から依頼された仕事を行う。根っからの社畜体質。天使の時の名前はマル。

ヒソプ

蒼の相棒の柴犬。

依田光

蒼が担当し、守っているクリスチャン。しかし、サンデークリスチャンで日曜以外は普通の女子高生。

知村紘一

蒼の後輩の天使。悪霊が出入りする門で警備をしている。人間界にいるの時は知村紘一という名前を持つ。

知村柊

蒼の後輩天使。人間界にいる時は知村柊という名前をもつ。

橋本瑠偉

後輩天使。人間の時の名前は橋本瑠偉。

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