第113話 御翼とヴェックマン(2)
文字数 1,425文字
長年ズルズルと付き合った晴人と別れてから、再び婚活を繰り返していた。土日は婚活で潰れ、ほとんど休みが無い生活を送っていた。ちなみに結婚相談所の年会費は晴人の無理矢理出して貰った。意外と権利を要求する真雪に晴人はびびっていたが、これぐらいしてもバチは当たらないと思った。
「真雪さん、あなた眉毛が変! 服装もエビちゃんOL風のは、おやめなさい!」
結婚相談所の担当カウンセラーは、だいぶ毒舌だった。五十過ぎの女性だったが、何組もカップルを成立させた事が自慢のようで、真雪に会う度にチクチクと嫌味を言われた。カウンセラーは、その界隈では有名人のようで毒舌ブログや電子書籍などを出していた。
「眉毛が変って言われましても。そもそもエビちゃんOLってなんですか? 私、平成生まれなんで知らないんですけど」
「はあ? そんな可愛げない事言ってるから、結婚できないんですよ」
真雪も気が強く言い返していたら、カウンセラーとは口喧嘩のようになってしまった。正直、とても疲れる不毛なやり取りだった。事実、カウンセラーが言うように、真雪とお見合いしたい相手は、今のところゼロで、その事も考えると、さらに心は重くなってくる。夢だったハイスペ男子との出会いもなく、現実にあるのはネットで自分で書いた医者とOLの妄想チックなシンデレラストーリーだけだった。
「もう、いいです。ここの会員辞めますから」
ついつい捨て台詞も吐き、結婚相談所も退会してしまった。元々自分のお金で入ったわけでも無いので、ヤル気も出なかったのかも知れない。
こうして真雪は、穂麦市の駅ビルの中にある結婚相談所を後にし、トイレに直行した。駅ビルの中のトイレなので、洗面台も混み合っていた。穂麦市は比較的静かな土地だったが、近年は新しくマンションや商業施設も新しく出来、人口も増えているようだった。十年ぐらい前は、ご当地キャラクターを作って町おこしをしていたが、今はそういった話もあまり聞かなかった。
真雪は洗面台の鏡を見ながらメイクを直してみた。もう昼過ぎだったので、顔は油が出てファンデーションが落ちかけていた。カウンセラーn言われたせいか眉毛も変なのか気になってしまう。確かに少し細い気もするが、ナチュラルにしていると、タヌキっぽいというか芋臭さが上がってしまう。
「やばー、もうすぐクリスマスじゃん」
「早く彼氏作らないとまずいよねぇ」
隣の洗面台では、大学生ぐらいの若い女性達が、そんな話題をしていた。確かに真雪よりも肌が白く、ハリがあった。
クリスマスか。
もうそんな時期なのは、すっかり忘れていた。晴人とダラダラと付き合っていたお陰で、毎年クリぼっちである事はなかったが、今年はそういう訳にもいかないようだった。無理矢理彼氏を作っても良いが、この歳で結婚を考えていないような男と付き合ってしまうのもリスキーだ。だからといって婚活も上手くいかず、カウンセラーから嫌味しか言われない。
ハリが落ちかけている自分の肌を見つめながら、真雪は焦りはじめていた。結婚願望が誰よりも強い割に一つも結果を出していない現状に、さすがに「ヤバっ!」と言いたくなってしまった。
「ど、どうしよう……」
洗面台の鏡を見つめながら呟くが、誰も返事なぢは無い。
鏡よ、鏡、鏡さん。私と結婚したいハイスペ男子は、どこにいますか?
そんな質問もして見るが、当然のように返事はなかった。心の中に焦りの感情だけが、大きく膨れ上がっていた。
「真雪さん、あなた眉毛が変! 服装もエビちゃんOL風のは、おやめなさい!」
結婚相談所の担当カウンセラーは、だいぶ毒舌だった。五十過ぎの女性だったが、何組もカップルを成立させた事が自慢のようで、真雪に会う度にチクチクと嫌味を言われた。カウンセラーは、その界隈では有名人のようで毒舌ブログや電子書籍などを出していた。
「眉毛が変って言われましても。そもそもエビちゃんOLってなんですか? 私、平成生まれなんで知らないんですけど」
「はあ? そんな可愛げない事言ってるから、結婚できないんですよ」
真雪も気が強く言い返していたら、カウンセラーとは口喧嘩のようになってしまった。正直、とても疲れる不毛なやり取りだった。事実、カウンセラーが言うように、真雪とお見合いしたい相手は、今のところゼロで、その事も考えると、さらに心は重くなってくる。夢だったハイスペ男子との出会いもなく、現実にあるのはネットで自分で書いた医者とOLの妄想チックなシンデレラストーリーだけだった。
「もう、いいです。ここの会員辞めますから」
ついつい捨て台詞も吐き、結婚相談所も退会してしまった。元々自分のお金で入ったわけでも無いので、ヤル気も出なかったのかも知れない。
こうして真雪は、穂麦市の駅ビルの中にある結婚相談所を後にし、トイレに直行した。駅ビルの中のトイレなので、洗面台も混み合っていた。穂麦市は比較的静かな土地だったが、近年は新しくマンションや商業施設も新しく出来、人口も増えているようだった。十年ぐらい前は、ご当地キャラクターを作って町おこしをしていたが、今はそういった話もあまり聞かなかった。
真雪は洗面台の鏡を見ながらメイクを直してみた。もう昼過ぎだったので、顔は油が出てファンデーションが落ちかけていた。カウンセラーn言われたせいか眉毛も変なのか気になってしまう。確かに少し細い気もするが、ナチュラルにしていると、タヌキっぽいというか芋臭さが上がってしまう。
「やばー、もうすぐクリスマスじゃん」
「早く彼氏作らないとまずいよねぇ」
隣の洗面台では、大学生ぐらいの若い女性達が、そんな話題をしていた。確かに真雪よりも肌が白く、ハリがあった。
クリスマスか。
もうそんな時期なのは、すっかり忘れていた。晴人とダラダラと付き合っていたお陰で、毎年クリぼっちである事はなかったが、今年はそういう訳にもいかないようだった。無理矢理彼氏を作っても良いが、この歳で結婚を考えていないような男と付き合ってしまうのもリスキーだ。だからといって婚活も上手くいかず、カウンセラーから嫌味しか言われない。
ハリが落ちかけている自分の肌を見つめながら、真雪は焦りはじめていた。結婚願望が誰よりも強い割に一つも結果を出していない現状に、さすがに「ヤバっ!」と言いたくなってしまった。
「ど、どうしよう……」
洗面台の鏡を見つめながら呟くが、誰も返事なぢは無い。
鏡よ、鏡、鏡さん。私と結婚したいハイスペ男子は、どこにいますか?
そんな質問もして見るが、当然のように返事はなかった。心の中に焦りの感情だけが、大きく膨れ上がっていた。