第19話 正しさと焼きそばパン(4)完

文字数 839文字

 後日、朋花は職員室の隣の面談室に、いじめっ子の原口や江崎を呼び出していた。

 明らかに朋花に舐め腐った態度で、二人とも派手な色に塗った爪をいじっていた。一見、派手な制服が似合うお嬢様風の二人だが、表情や態度に意地悪さが滲み出ていた。

「朋花先生、突然呼び出ししてなんですか?」

 江崎に至っては、薄ら笑いも浮かべていた。明らかに自分は若い女性教師だと舐められていた。

 ぐっと奥歯を噛み締めてしまう。本当なら、なあなあに済ませておきたい。でも、自分にはするべき事があると、誰かが言っている気がした。

「あんたたち、いじめやってるそうだね?」

 内心はビクビクしていたが、精一杯胸をはった。

「いじめはダメ。どんな事情があってもダメ!」

 ついに朋花は、原口や江崎を叱る事に成功した。確かに他人を傷つける子供には、何の理屈も無視し、止めさせるべきだった。いくら意識が低いとはいえ、生徒ではなく、自分ばかり可愛がっていた事にも気づく。これは大人として恥ずかしい。

「私もいじめられっ子だったの。ダメ、どんな事情があっても人を傷つけていい理由はないから」

 朋花の変わりように原口も江崎も言葉を失っているようで、放心状態だった。普段ヘラヘラしている朋花だからこそ、二人にも真剣さが伝わったようだった。その後、二人ともしばらく大人しく生活するようになり、小うるさい光からも文句を言われる事もなくなった。

 こうしてやるべき事を終えた朋花は、再び福音ベーカリーに向かった。

「さあ、朋花さん! ご褒美にいっぱい美味しい焼きそばパンを焼いたよ」

 笑顔の蒼に迎えられ、栄養的には全く正しく無い焼きそばパンを食べた。やるべき事をやった後に食べた焼きそばパンは、いつもより美味しく感じてしまった。紅生姜の辛さも身に染みる。

「わん!」

 柴犬は相変わらず朋花に懐き、側にくっついて離れない。

 原口や江崎にはすっかり嫌われていたが、このパン屋に行けばこんなに懐いてくれる柴犬がいる。まあ、ちょっと人に嫌われても良しとしよう。
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登場人物紹介

天野蒼

不思議なパン屋の店員。その正体は天使で、神様から依頼された仕事を行う。根っからの社畜体質。天使の時の名前はマル。

ヒソプ

蒼の相棒の柴犬。

依田光

蒼が担当し、守っているクリスチャン。しかし、サンデークリスチャンで日曜以外は普通の女子高生。

知村紘一

蒼の後輩の天使。悪霊が出入りする門で警備をしている。人間界にいるの時は知村紘一という名前を持つ。

知村柊

蒼の後輩天使。人間界にいる時は知村柊という名前をもつ。

橋本瑠偉

後輩天使。人間の時の名前は橋本瑠偉。

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