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文字数 513文字

 説明会会場の大会議室に集まっていた一団が解散となる。

 そこでは、単独行動が主の治安維持メンバーが合同で職務の詳しい説明を受けていた。
 総勢三十名ほどの彼らは、普段は徒歩や自転車で街中をパトロールし、指揮監督室からの指令を受けたら向かった先にいる現場のチームに加勢したりする遊撃隊としての役目を持たされていた。

 裕丈は「BB」というコードネームが既に了承されていた。
 やつれて頬骨が突き出ていて、あとは顎髭を伸ばしたせいもあるのだろう、やや渋みを帯びた中年男の風貌であった。

 メンバーは服装自由とされていたためツナギや迷彩シャツ等、皆さまざま、思い思いの格好で参加していたが、その中でも彼の袴姿はひと際異風である。
 それまで日常には袖を通したことのない格好に身を包むことで、彼は新境地に自分を放り込み、無我に至る覚悟を決めていた。

 手近にいる市職員に警察署の場所を尋ねた。
 職員の女性は怪訝な表情を浮かべながらも、同じ官庁街通りを西へ向かって徒歩三分のところにあるといった。

「かたじけない」
 裕丈は彼女に頭を下げ、階下へ伸びる階段の方へ振り向くと鋭い眼光を放った。
(沙織を蹂躙し、死に追いやった人間を必ず見つけ出し、仇を討つ)
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