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文字数 748文字

 津村は部屋の外へ裕丈を連れ出した。

「この手の犯罪は、被害者の女性がな、体面を気にするあまり通報されないケースも多い、とされている。それゆえこの他にいる犯人にたどり着くのは、決して簡単ではないが、累犯性つまり再犯性の高い犯罪なんだな。須波はそう、広い地域でもないから、追いかけていたらよ、いつかは、あんたの探す犯人にたどり着けるだろうな」

 裕丈が黙って津村の目を見た。
 思わず津村は首をすくめる。
「とは言え、なるべくだな、早う捕まえて被害者の女性を一人でも多く減らしたい。ということで、また今夜みたいなケースがあるとよ、僕から電話を入れることもあるだろうな。BBさんや、そこんとこ、よろしく頼むよ」

 裕丈は片方の眉を持ち上げただけで言葉を発さなかった。
 その代わり、軽く頭を下げると、背筋を正しエレベータに向かった。
 背中に津村の刺すような目線を感じながら。

「夜十一時のニュースです」
「非常事態宣言が発令され、治安維持を目的とした市の臨時職員であるチーム制度が導入されてからは日増しに任意同行者、及び逮捕者の数が増えています」
「今日の午後、市長秘書である男がとある企業から多額の賄賂を受け取っていた疑いが高まり、現在取調べを受けています。市長選において、その費用とどのようなつながりがあるのか、警察では調べを進めています」
「関連して、榛村市長の容態についてです。医師団から何ら説明がないことで、ネット上を中心に市長死亡説まで出てくる事態となっています。それを受けて、門脇市長代行が定例会見の場で記者の質問に答える形で言及しました。『それについて当然疑問に思う向きもあるだろうが、ノーコメントとさせていただく。それが何故かということについてもノーコメントだ』そのように述べ、一切の回答を控えました」

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