10(2)
文字数 314文字
(……ねえ? あれは何だったの?)
涙も出ない無力感が、彼女を包み込んだ。
立ち止まり深く息をつくと、真白はいきなり、ドンと背中を突き飛ばされた。
「何?」
よろめきつつ振り向くと、暗闇から素早く伸びてきた分厚い手に、強い力で手首を取られた。
「こっちへ来い」
若い男の声がした。
真白は振りほどこうとして、つかまれた左手を大きく上下させた。
「何す……」
かえって手首が折れそうになった。
今度は腰を落として踏ん張ってみせるものの、強い力で闇の方へ引っ張られていく。
「い、いや! 放し……」
「おい。騒ぐとこいつで刺すぞ」
男は小さくささやくようにいって、真白の鼻先にペティナイフをかざした。
(!)
真白は、その尖った刃先に目を見開く。
涙も出ない無力感が、彼女を包み込んだ。
立ち止まり深く息をつくと、真白はいきなり、ドンと背中を突き飛ばされた。
「何?」
よろめきつつ振り向くと、暗闇から素早く伸びてきた分厚い手に、強い力で手首を取られた。
「こっちへ来い」
若い男の声がした。
真白は振りほどこうとして、つかまれた左手を大きく上下させた。
「何す……」
かえって手首が折れそうになった。
今度は腰を落として踏ん張ってみせるものの、強い力で闇の方へ引っ張られていく。
「い、いや! 放し……」
「おい。騒ぐとこいつで刺すぞ」
男は小さくささやくようにいって、真白の鼻先にペティナイフをかざした。
(!)
真白は、その尖った刃先に目を見開く。