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文字数 314文字

(……ねえ? あれは何だったの?)
 涙も出ない無力感が、彼女を包み込んだ。

 立ち止まり深く息をつくと、真白はいきなり、ドンと背中を突き飛ばされた。
「何?」
 よろめきつつ振り向くと、暗闇から素早く伸びてきた分厚い手に、強い力で手首を取られた。
「こっちへ来い」
 若い男の声がした。
 真白は振りほどこうとして、つかまれた左手を大きく上下させた。
「何す……」
 かえって手首が折れそうになった。
今度は腰を落として踏ん張ってみせるものの、強い力で闇の方へ引っ張られていく。
「い、いや! 放し……」
「おい。騒ぐとこいつで刺すぞ」
 男は小さくささやくようにいって、真白の鼻先にペティナイフをかざした。

(!)
 真白は、その尖った刃先に目を見開く。
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