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文字数 512文字

 昨年の晩秋、第11■代内閣総理大臣に任命された南武和雄氏は、かねてより懸念事項となっていた国内の治安悪化に対する政策として「エデン構想」に本格的に着手する決断を下した。

 関係省庁の対応を念頭に、その指揮・調整機関としてプロジェクトチーム「エデン委員会」を発足させ、その委員長には公安警察から出向してきた金井史郎氏が就任した。
 本政策を実行に移す前準備として、実に20年ほど前には実験都市が選定され、現在では施設や組織等の整備がほぼ完了している。
 それらの動きは歴代総理大臣の意向でマスコミ報道関係、ひいては国民全体には一切公表されず、それどころか政府関係者でもごく一部が知るだけであった。
 そうして「エデン構想」は、長きにわたり秘密裡に進められた。

 南武総理大臣就任後初めての統一地方選挙において、■■県須波市で市長選が行われ、既成政治からの脱却をうたった30歳の元市会議員、無所属候補の榛村正宗氏が初当選した。
 その須波市は、まさにその実験都市の一つであった。よって「エデン構想」を推進するために、万全を期して擁立した中央官僚出身の与党推薦候補が僅差ながらも選挙で敗れ去ったことは、日本政府に深刻な打撃を与えたのだった。
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