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文字数 391文字

 マイケルは、手の中にある缶のロゴを見つめるような仕草をした。その口元が歪む。
「いいかい? 世界ではどんどん経済格差が広がっている。たとえば上位10%の富裕層が個人資産の約80%を占めている半面、下位50%の貧困層はたったの2%弱。日本も調査したら、おそらくそれに準じた数字が出るはずだ。つまり、陰で犠牲、あるいは奴隷であることを強いられている人間たちのいるおかげで、富裕層や俗にいう中間層の僕らの今日がある。そこから、目をそむけていては何も解決しない」

 見えないものを見ようとするかのように、マイケルは暗黒の空を仰いで目を凝らすようにしていた。
「かの国の掲げる共産主義も、もはや崇高でもなく、それ以前に思想でもない。単なるシステムだ。人が人として生きることを許さない奴隷化もしくは家畜化のシステム。それが本質だ」
 そういうとマイケルは、須波市内にあるという収容所のことを明かした。
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