12(1)
文字数 588文字
(あの白壁のアパート……?)
足がすくむ。
(……でも、行かなきゃ! 絶対、まともでない何かが起きている!)
アパートの階段下まで来ると、迷いなく二階へ上がった。そこには、通路半ばに開け放したままのドアがある。
足音を鳴らさないように駆け寄り、そっと覗いた。
おそらくBBだと思われる袴姿の背中が見える。
同時に、ほとんど反射的に真白の眉間にしわが寄った。
(この匂いはあの時の!)
独特の汗と何かが混じった、むっとした強烈な異臭が、部屋の外まで漂ってきている。あの夜、須磨兄妹を襲った暴漢の三人組の発していたものと、明らかに同じだった。
(間違いない! あいつらが、ここにいる!)
真白は腰にぶら下げていた伸縮式の警棒を伸ばすと右手に握った。
(何というめぐり合わせ! いよいよその時が来たんだ!)
おのずと手が汗ばむ。
「なぜ、この男がここへ?」
焦りを含んだ男のうめき声がした。
「やはり、貴様らか。ここで会うたが百年目。外道め。神妙にしろ」
そういったBBが、左の腰に差しているバットに右手を掛けるのが見える。
するとその奥で、しゃがれた笑い声がした。「ブンブン侍だっけ? えらく威勢がいいな」
(やはり、あの時の男!)
その独特の声は忘れていない。
真白の頭に省吾の腫れた横顔がよぎる。
(絶対許さない!)
警棒を握り直すと彼女は、まさに一触即発の状況である部屋の中へ踏み込んでいった。
足がすくむ。
(……でも、行かなきゃ! 絶対、まともでない何かが起きている!)
アパートの階段下まで来ると、迷いなく二階へ上がった。そこには、通路半ばに開け放したままのドアがある。
足音を鳴らさないように駆け寄り、そっと覗いた。
おそらくBBだと思われる袴姿の背中が見える。
同時に、ほとんど反射的に真白の眉間にしわが寄った。
(この匂いはあの時の!)
独特の汗と何かが混じった、むっとした強烈な異臭が、部屋の外まで漂ってきている。あの夜、須磨兄妹を襲った暴漢の三人組の発していたものと、明らかに同じだった。
(間違いない! あいつらが、ここにいる!)
真白は腰にぶら下げていた伸縮式の警棒を伸ばすと右手に握った。
(何というめぐり合わせ! いよいよその時が来たんだ!)
おのずと手が汗ばむ。
「なぜ、この男がここへ?」
焦りを含んだ男のうめき声がした。
「やはり、貴様らか。ここで会うたが百年目。外道め。神妙にしろ」
そういったBBが、左の腰に差しているバットに右手を掛けるのが見える。
するとその奥で、しゃがれた笑い声がした。「ブンブン侍だっけ? えらく威勢がいいな」
(やはり、あの時の男!)
その独特の声は忘れていない。
真白の頭に省吾の腫れた横顔がよぎる。
(絶対許さない!)
警棒を握り直すと彼女は、まさに一触即発の状況である部屋の中へ踏み込んでいった。