エピローグ1(2)

文字数 596文字

「あと、もう一つ、あんたに言っておきたいことがあんだ。まあ、聞くともなしに聞いてしまったんだが、その、亡くした相手の女性のことだな」
 オレがそこまで口にすると、滝川は色を失い、目を落とした。
 が、オレにためらいはない。
「いいかい? その寂しさを埋めようとするなよ。埋めようとしなければ、本当に徐々にだけど自然に埋まっていく。それまで待っていなよ」

 滝川は無言だったが、しきりに目を瞬かせている。おそらく、オレの話が的外れではないということだろう。
 オレは思わず鼻を掻いた。
「で、何というか、まあ、実はオレにもそういうことがあったからさ」
 今度は真白がオレに顔を向けて、何か言いたげにしたが、オレはそれを受け流した。
「……ま、あくまでオレの提案だけど、少なくともそう感じてから、オレは死にたいとは思わなくなったぜ」

 悲しみがぶり返したせいだろう、滝川は顔を歪めたままだったが、黙って小さく頷いた。
 滝川を縛っていた紐を解く。
 彼は「すみません」といったきりだったが、まもなく風呂敷包みと金属バットを抱えると、背筋を正して一礼してオレ達に背を向けた。
 その足取りは軽快とは言い難かったが、しっかり地について見えた。

「よう、やっぱり、あんたはまだBBだよ」
 そう声を掛けると、滝川は顔を半分だけこちらに見せて、一瞬苦笑いのような表情をした。
 オレの気のせいか、彼の目に幾分、光が戻ったように見えた。
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