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文字数 844文字
ハーマンは、半分だけ真白の方へ顔を向けると冷たい口調でいった。
「たくさんの犯罪者を効率よく捌くには有効だ。かの国で実証された、れっきとした統治手段だ」
「ここは日本です! そんなこと、日本の法律で許されるわけがない!」
つかみかかろうとした彼女は腰のベルトを後ろに、グイと引っ張られた。
彼女がマイケルに引き戻されていくさまを尻目に見たハーマンは、ふんと鼻を鳴らした。
「よう、マイケル。日本人をメンバーに入れるといろいろと面倒だな、やっぱり」
マイケルがそれに答えないでいるのに対して彼は首をすくめると、再びゆっくりと歩き始めた。
マイケルに車に押し込まれた真白は、運転席に回り乗り込んできたところで、また同じことを言おうとするも、マイケルのすぐさま浴びせられた叱責にひるんでしまった。
「いきなり何を言い出すんだ? 君も収容所に送られたいのか!」
ハーマンらの乗ったボックス車が、赤いテールランプをともして暗がりの中へ去ってゆくのが見えた。
マイケルは額をハンドルに当てて、うんざりしたように深く息をつく。
沈黙の後ややして彼は、ウィンカーを出すとほとんどそのまますぐに車を走らせた。
「あの、マイケルさん、さっきあの人が言っていたのは?」
「やっぱり知らなかったんだな。あの無鉄砲さは無知からか」
そこまでいうと、マイケルは何も話さなくなった。ゴオオ、とアスファルトを蹴るタイヤの音だけが車内で聞こえている。
様々な感情が渦巻いて、真白はめまいをおぼえた。冷えた汗が背筋を伝う。
いくつかの交差点を進むと、対向車線に回転灯を光らせた救急車が見え、やがてすれ違った。おそらく先ほどの現場である駐車場に向かっているのだろう。
それから少し顔を上げたが、苛立ちの対象であるマイケルを見ないようにして、真白は流れていく道の脇の景色を黙って眺めていた。その横顔に向かってマイケルが声を掛ける。
「戻る前にコンビニに寄っていかないか。深夜の外気で身体が冷えたろ? 何か温かいものでも飲んで、一息入れよう」
「たくさんの犯罪者を効率よく捌くには有効だ。かの国で実証された、れっきとした統治手段だ」
「ここは日本です! そんなこと、日本の法律で許されるわけがない!」
つかみかかろうとした彼女は腰のベルトを後ろに、グイと引っ張られた。
彼女がマイケルに引き戻されていくさまを尻目に見たハーマンは、ふんと鼻を鳴らした。
「よう、マイケル。日本人をメンバーに入れるといろいろと面倒だな、やっぱり」
マイケルがそれに答えないでいるのに対して彼は首をすくめると、再びゆっくりと歩き始めた。
マイケルに車に押し込まれた真白は、運転席に回り乗り込んできたところで、また同じことを言おうとするも、マイケルのすぐさま浴びせられた叱責にひるんでしまった。
「いきなり何を言い出すんだ? 君も収容所に送られたいのか!」
ハーマンらの乗ったボックス車が、赤いテールランプをともして暗がりの中へ去ってゆくのが見えた。
マイケルは額をハンドルに当てて、うんざりしたように深く息をつく。
沈黙の後ややして彼は、ウィンカーを出すとほとんどそのまますぐに車を走らせた。
「あの、マイケルさん、さっきあの人が言っていたのは?」
「やっぱり知らなかったんだな。あの無鉄砲さは無知からか」
そこまでいうと、マイケルは何も話さなくなった。ゴオオ、とアスファルトを蹴るタイヤの音だけが車内で聞こえている。
様々な感情が渦巻いて、真白はめまいをおぼえた。冷えた汗が背筋を伝う。
いくつかの交差点を進むと、対向車線に回転灯を光らせた救急車が見え、やがてすれ違った。おそらく先ほどの現場である駐車場に向かっているのだろう。
それから少し顔を上げたが、苛立ちの対象であるマイケルを見ないようにして、真白は流れていく道の脇の景色を黙って眺めていた。その横顔に向かってマイケルが声を掛ける。
「戻る前にコンビニに寄っていかないか。深夜の外気で身体が冷えたろ? 何か温かいものでも飲んで、一息入れよう」