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文字数 506文字

「どこからどこまでが本当のことなんだか」
 そう独り言ちた真白の肩にマイケルは手を添えた。
「いいかい、ジェーン。日本政府内の動きやエデン構想や委員会のことは、僕には分からない。けど、この取り締まりや都市占拠のやり口は、かの国の常套手段だよ。強権政治、領土拡張主義がその旗印ともなっている」
「ここは、日本です。あたしが生まれ育った街なのに、なんでそんなことに?」
「非常事態宣言によって、市の再犯防止プログラムに則った人材教育施設が稼働し始めている。さっき言った収容所のことだ。有罪とされた人々のうち、罪が軽い者、更生の見込みありとされた者が送り込まれると言われている」

 真白の左右の肩がこわばった。
「ここ数日でここまで須波が変わってしまうなんて。まるでこういう日が来るのを知っていたかのようですよ。兄が言ったみたく用意が良すぎます」
 マイケルは頷いた。
「お兄さんは気づいたんだね。このようなシステムは、一朝一夕に出来上がるものではない。しかも、君たち日本人が思っている以上に、かの国は用意周到だ。現に、日本政府も驚くほど手玉に取られている。かの国のロビイストがそれほど根深く浸透しているということの証左かもしれない」


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