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文字数 431文字

「なんだ。それを早くいってくれ。BBとやら、いい物を持ってるな。中にテロリストの若い男がいる。そのバットでこのドアを一気に打ち破ってもらおうか」
 ハーマンという男は、いささか愉快そうな表情を浮かべた。

「改めて問う。中にいる男が何をしたというのだ?」
 裕丈は、顎先で扉を指した。
「『何をした』?」
 ハーマンの顔が歪む。
「そんな理由で我々は連行したりはしない。こうやって当局に逆らうような汚物を街から撤去するのが我々の役目だ。BB、君はどちらの味方をしているのかな。場合によっては、公務執行妨害罪で、まずは君を連行せねばなるまい。それでもよいのか」
 ここでハーマンは、意地の悪い笑い声を立てた。
 裕丈は、それを悠然と受け流す。
「拙者はいかにも、治安維持チームの一員でござる」
「ならば」
 そう言いかけたハーマンに、裕丈は言葉に被せた。
「なれど、その前に拙者は日本人なり。この国を憂い想うがゆえに取るべき道というものがござる」
 彼のバットを握りしめる両手に、力がこもる。
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