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文字数 793文字

「飯村真白さんですね! 飯村さんのような若い女性のメンバーの方は、大変珍しいと聞いています! どういったきっかけで治安維持チームに応募されたんでしょうか?」

 こんな赤の他人にベラベラと兄が被害に遭った話をするのはどうかと真白は思った。が、とっさの作り話でこの場を切り抜ける考えにもなれなかった。

「最近、兄と住んでいるアパートに不法侵入っていうんですか、勝手に上がり込んできたのがいて、あたしたち、暴力を振るわれたんですね。そう、深夜のことです」
 柔和だった門脇が反射的に渋面を作った。
 事前に情報収集していなかったのだろうか。栗橋は本気で驚いたようだった。

「ほ、ほんとですか? 怪我とかは?」
「あたしは何とか逃げ出して無事だったのですが、兄が入院になりました」
「はあ」
 栗橋は息を飲んだ。

(ほらほら、そんなこと訊くからだよ。マジレスしたら、変な空気になってきた)
 真白は早々にうんざりしてきて、思わず口元を歪める。
 そのまま、しばらく重苦しい沈黙の時間が流れたが、やがて栗橋が膝を叩いた。

「なるほど! わかりました! ありがとうございます!」
(え? 何が?)
 真白は、思わずのけぞった。

「それでは、ですね。女性ならではの視点や感覚を生かした活躍もあるかと思いますが、それについて何か具体的なエピソードとかがあれば、ぜひ伺いたいです!」
「うーん」
 真白は言葉に詰まった。

(まーた、他人だからって乱暴な質問だな。まだ入ったばかりで、そんなの分からないよ)

 そうは思うものの、さすがにこのような場でため息をつくのは、憚られた。
 そのくせ、若さゆえか、あるいは性格に由来するものか、単刀直入な言い方以外に気の利いた、あるいはオブラートに包んだ言葉選びもできない。
 それで彼女はついぶっきらぼうな口の聞き方になってしまった。

「別にないです」
「えええ? 何も?」
 栗橋は、ひどく困惑した様子だった。
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