エピローグ1(1)
文字数 756文字
「おうおうおう! 待ちな!」
トザキの運転する車から降りて、先ほどのコンビニまで走ったオレはまだ息を切らしていたが、本当にやってしまいかねない。そう感じて、さすがに、そこでオレは声を掛けた。
飯村真白が振り返った。驚きで彼女の口は半開きで、目が大きく見開かれている。まるで口が聞けないでいる彼女の様子にオレは、思わず短く笑い声を立てた。
「これで合点がいったぜ! どおりでビタ一文払う気がなかったわけだ!」
滝川裕丈は、後ろ手に縛られたまま、こちらを向いたきり、ぼんやりとしている。
真白は目を円く、パチパチとさせて「なんでいるの?」と訊いてきた。
「ホテル、旅館が一つもないこんな田舎町で降りてどうすんのかと思ってな。それを観察しに来たわけよ」
真白も滝川も言葉に窮しているようだったが、オレはこれまでの二人のやり取りをだいたい聞いていた。
「ハハハ! あんたら、まさか人前でそういうことをする趣味があったのか?」
真白は、怪訝そうにした。「そういうことって?」
「緊縛プ……いや、なんでもない」
背後から、F1エンジンが近づいてくる。10分ほどしたらUターンして迎えに来るようにトザキに頼んであったが、まだ事は済んでいない。
車を停めたトザキが、窓を開けていった。
「え、マーシー、結局どうすんの?」
「ちょい待ち!」
奴を手で制すると、オレは向き直って二人の方に歩いて近づいた。
「ところで、滝川さんよ」
「……はい?」
「いいかい、命ってのはさ、断ち切るためじゃなくてよ、つなげるためにあるんだぜ?」
「……はあ」
「あんたの命は確かにあんただけの物だけどさ、オレ達が必死でつなげた命は大事にしてくれよ。他に生かすあてがないなら、また誰かの命をつなげるのに使ってほしい。きっとどこかで、あんたの助けを待っている人間がいるぜ?」
トザキの運転する車から降りて、先ほどのコンビニまで走ったオレはまだ息を切らしていたが、本当にやってしまいかねない。そう感じて、さすがに、そこでオレは声を掛けた。
飯村真白が振り返った。驚きで彼女の口は半開きで、目が大きく見開かれている。まるで口が聞けないでいる彼女の様子にオレは、思わず短く笑い声を立てた。
「これで合点がいったぜ! どおりでビタ一文払う気がなかったわけだ!」
滝川裕丈は、後ろ手に縛られたまま、こちらを向いたきり、ぼんやりとしている。
真白は目を円く、パチパチとさせて「なんでいるの?」と訊いてきた。
「ホテル、旅館が一つもないこんな田舎町で降りてどうすんのかと思ってな。それを観察しに来たわけよ」
真白も滝川も言葉に窮しているようだったが、オレはこれまでの二人のやり取りをだいたい聞いていた。
「ハハハ! あんたら、まさか人前でそういうことをする趣味があったのか?」
真白は、怪訝そうにした。「そういうことって?」
「緊縛プ……いや、なんでもない」
背後から、F1エンジンが近づいてくる。10分ほどしたらUターンして迎えに来るようにトザキに頼んであったが、まだ事は済んでいない。
車を停めたトザキが、窓を開けていった。
「え、マーシー、結局どうすんの?」
「ちょい待ち!」
奴を手で制すると、オレは向き直って二人の方に歩いて近づいた。
「ところで、滝川さんよ」
「……はい?」
「いいかい、命ってのはさ、断ち切るためじゃなくてよ、つなげるためにあるんだぜ?」
「……はあ」
「あんたの命は確かにあんただけの物だけどさ、オレ達が必死でつなげた命は大事にしてくれよ。他に生かすあてがないなら、また誰かの命をつなげるのに使ってほしい。きっとどこかで、あんたの助けを待っている人間がいるぜ?」