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文字数 518文字

(二度とあたしに手をかけられないようにしてやる!)
 真白は、短く息を吸うと「ぐあ!」「ぐあ!」と連呼して、男にところ構わず殴打の雨を降らせた。
「ごふ!」
「あげっ!」
「あひん!」
 男は、マウントを取られた格闘家のように抵抗の手立てを失ったのか、真白の滅多打ちを浴び続けた。
(二度とあたしに触らせない! ただの肉の塊にしてやる!)
「ぐあ!」「ぐあ!」
 手首の痛みを堪えながら真白は警棒を振り続けた。

 男は腕を組んで頭や身体をガードしようとしていたが、その動きがだんだんと鈍くなっていき、鼻柱に決まったあとだろうか、鮮やかな色をした鼻血が噴き出すとほぼノーガードになった。それでも真白は、警棒を上下左右に振りながら、男の頭や身体を一心に打ち続けた。
 すると、不意に彼女は後ろから突然大きな手で両肩をつかまれた。ひどく驚いて彼女は思わず飛び上がった。
「おい、もうやめろ」
 振り返ると、見たことのない三〇歳くらいの男だった。
「よく見ろよ。もう奴は伸びちまっている」
 真白は、ゆっくり立ち上がって男を見下ろした。確かにそのようだった。
 小刻みにけいれんする男のブーツの踵が、コンクリートの床を小刻みに引っ搔いていた。その音だけがカリカリと耳につく。
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