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文字数 374文字

 特別の落ち度があるわけでもなく、おそらくただ自分が夜中に一人で歩いている若い女性というだけで、理不尽にも標的にされている。

 彼の異様な生理現象からして全く常軌を逸している。おそらく、脳のリミッターが外れ、法意識も理性ももはや持ち合わせていないに違いない。
 下手に捕まったら最後。自分と呼べるもの全てが、この男の思うままに蹂躙されてしまう。
 強烈な震えに襲われ、真白の歯が小刻みに固い音を立てる。
 男が舌なめずりした。
 そのざわりとした耳の奥の不快な感触に彼女は眉をしかめるも、なおもにらみ合った。

 やがて、男は体重移動したのか、靴の裏とトイレの扉の擦れる音がした。
(来る!)
 真白の警棒を握る手に力がこもった。
 男は案の定、その2メートルほどの高さを飛び降りてきた。
 真白は素早く片膝をついて上体を起こすと、着地した男に目掛けて警棒を振り上げた。

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