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文字数 833文字

「そう」
 真白は、目を伏せた。
「お、重たいですよね」
「最初はそんなもんかもしれないな」
「そんなもの、ですか」

 海沿いを走る道路を、時折車が左右に行き交っている。その切れ間に差し込んでくる夕陽と訪れる波音が、真白の胸にしだいに染みていくようだった。
「ところで」
「はい?」
「君のお兄さんの具合は?」
「あれ。あたしのこと、前から知っていたんですか?」
「ん、まあ」
 BBは咳払いした。
「聞くともなしに聞いてしまったのですが」
「君は食堂で、あのマイケルって男に話していたでしょう? ちょうどそのとき僕は君の後ろあたりにいました。たまたまですがね」

 真白が怪訝そうにしているせいか、BBは気まずさに思わず多弁になる。
「その、スズメバチのタトゥーのことを耳にして、つい、そのまますっと君の話を」
 ただ、これだけは真白の目をじっと見てから、落ち着き払っていった。
「被害に遭った直後に沙織がいっていた蜂の襲撃。ジェーンさんが被害を受けた事件の手口。それらと符合すると僕は感じたものですから」
 初めは、沙織の身に何が起きたか分からなかったこと。
 やがて、彼女の友人を通じて事件のあらましを知ったこと。
 が、彼女にどうしてあげればいいのか分からずに、戸惑っているうちに彼女がマンションから身を投げたこと。
 彼は努めて、淡々と話した。
「沙織が死んでから僕は仕事を辞めた。そして今度は僕が引きこもりました。もう生きていたくなくなりました。けど、死ぬ気力さえもありませんでした。一日のほとんどをベッドに横たわって過ごすようになって一週間。漫然とスマホを触っていて見つけたのが、あの求人広告でした。それでです、沙織の仇を討つために僕は部屋を出て、街に出ました」

 BBが吐露する真情を、真白は時折瞬いて相槌を打ち、静かに聞き入った。
「君と同じで、僕もチームメンバー募集は復讐の機会だと思いました。そして今日、それを果たしました。でも、充足感がないどころか、何も残っていないんです」
「どういうこと?」
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