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文字数 771文字

 階段を駆け下りると、ミニバンの後部座席の扉が左右に開いていた。

 二人が乗り込みドアを閉めるとトザキが歌うように陽気にいった。
「お客様、まもなく本車両は発車いたします。お荷物はお足元に置いて、命が惜しければシートベルトをお締めくださいませ!」
(は?)
 真白は、新たな試練を予感した。
 BBはヘルメットを脱ぐと両足の間に押し込んだ。二人がシートベルトの差込口を探すうち、エンジン音がさらにトーンを上げて車は前方に滑り出した。
 快適とは言い難い強烈なGが、二人の身体をリアシートに押し付ける。
「うっぷ!」
 真白が低く悲鳴を上げた。
 首がもげるかと思うほどの衝撃と痛みで、彼女の息は止まり、全身に汗が吹いた。

 助手席のマーシーはそれには慣れているのか、けろっとしたまま後ろを振り返った。
「これからこのまま市外に出る。二人ともマイナンバーカードをオレに貸してくれ。検問で提示する」
 真白は、腰に付けたポーチからカードを出しマーシーに渡した。BBからも受け取ったマーシーは、前を向いて座りカードをまとめながら話を続けた。
「先に支払いの話がしたい。逃げ切れたら、急に金を出し惜しみする奴がいるからな」

 全く相場の見当がつかない真白は、切り出す言葉に迷う。
 マーシーは、それを見て取ったのだろう。
「当社独自のシステムで、まあ、妙なこと言うようだが、あんたらの言い値だ」
「え?」
 真白はガタガタ揺れる車内で、ドアにつかまりながらマーシーの真意を考えて黙り込む。
「ちなみにあんたは、自分の命に値段をつけたら、いくらになる?」
「え?」
「ざくっと言ってみてよ。いくら?」
「……五千万?」
 マーシーは含み笑いをした。
「ふふふ、そんなもんか。億を付ける人間がざらにいるが、あんたは意外に自己評価が低いんだな」
「だから何?」
「それが本サービスの料金だ」
「え、そんな……」
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