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文字数 429文字

 裕丈は、眉をしかめた。

(先ほどのジャンらがやって来ると、それはそれで厄介なり)
 二人の始末を急ぐとあって、躊躇なく彼はにじり寄っていった。
 二人目の男は、先にやられた仲間の男が空いた胴を打たれたのを見たせいだろう、鉄パイプを裕丈と同じく腰の辺りで低く構えて警戒していた。が、恐れが先立ち、引いてばかりでとっさに突っ込んでくる様子が見受けられない。

(好機到来!)
 裕丈は踏み出すなり、片手に持ち直したバットの先端を、男の喉元に鋭く突き立てた。
「!」
 声にならない悲鳴がする。
 急所を襲われ呼吸ができなくなった男は、うめきながらコンクリートの床に崩れていった。
 そのさまを見つめていた裕丈は「さて」といって、ハーマンを見据えた。
 ハーマンは驚きと恐れのせいか、肩で大きく息をしながら「この気狂いめ」と絞り出すように独り言ちた。
「好きに申せ」
 そういうなり裕丈は肘を引くと、さながらバッターボックスに立ちボールを待ち受ける打者のように、バットを肩の高さに構えた。

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