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文字数 986文字

 真白らのチームは、それから丸二日待機部屋で過ごす羽目になった。
 出動要請がかかったチームは庁舎から出ていったが、庁舎内の食堂の混み具合を見る限り、少なくとも半数は手持無沙汰となっている様子だった。

 ジャンは食堂を見渡していった。
「本当はそれぐらいの方が平和でいいのだが、来週に控えたプロジェクトが始まると、おそらくここにいる人間の大半が出払うことになる」
 プロジェクトの存在は初耳だった。真白は何があるのかを聞き出そうとしたが、ジャンは首を横に振ると、詳細は今度のリーダーミーティングで知らされるとした上で明かした。

「ざっくり言うと、これまでは起きたトラブルや通報のあった案件をモグラ叩きのように対症療法的に我々は動いてきたが、先ほどの内倉室長の話にもあったように、犯罪予防の段階に入る」
 マイケルが、反射的に眉間にしわを寄せた。
「いわば、テロリストに対する先制攻撃だ」
 そういうと、ジャンは二人の目をのぞくようにした。
「まあ君たちは、今のうちにゆっくりしておくのも悪くない」

 ジャンは二人の肩に手を置くと、残ったコーヒーを飲み干して席を立った。
 二人は黙り込んだ。
 大食堂はひんやりとした空気が漂っているが、窓からは春先のさわやかな日光が差し込んでいる。
 まばらな話し声に混じってマイケルが、おもむろに口を開いた。
「ところで、ジェーンさ」
 真白は、隣に並んで座っているマイケルに目をやった。髭の剃り跡がやや青い。
「インタビューで答えていたけど、君は自分らを襲った犯人を捕まえるのが、チームに入ったそもそもの動機なのかい?」
「そうだね」
「で、まだ捕まっていないようだけど、君らを襲ったのはどんな連中だったんだい?」
 彼女は、少し目を細めて考えるようにした。
 柄の悪そうな三人組の若い男らで、各々迷彩柄のパンツを履いていたこと、手の甲のホーネット・タトゥーのことを、たどたどしく話した。
「連中は、何をやらかしたんだ?」
 深夜に、いきなり自宅アパートに上がり込んできて、兄を投げ飛ばし、彼の指をハンマーで損壊したこと、そして自分が暴行されそうになったことを小声でいった。

「ひどいな」
マイケルは短く質問や感想を挟むだけで、終始神妙な顔で黙って真白の話を聞いていた。
「インタビューでああいっていたけど、つまり、君にあるのは正義心というよりは復讐心なのかい?」
「……そうかも……」
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