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文字数 519文字

 そこまでいうと老人は、裕丈に肩を支えられた状態で辺りをぎろぎろと見回した。

「こんなふうにして、わしの家の外や中を眺めながらな、チビが『何か燃やすものはないっすか?』と言いよったわ。思いつかなんだで、わしは『さて』とでも口にしたのじゃが、そしたらの、いきなりにやけた顔で『それ、いいっすねー、そうしましょ!』と言うと、また後の二人がゲラゲラ笑い始めてな。わしが、あの男の言うている意味を測りかねているうちに、わしの住処に火を着け始めよったんじゃ」
「左様でござったか」

 耳の奥に憑いている三人の男らの笑い声がよみがえる。裕丈は、憤まんやるかたなしとばかりに、グラウンドの一隅をにらみつけた。「許せぬ」
「じい様、拙者が仇を討って進ぜよう」
「はあ」
 老人はいささかあっけに取られた顔をしたが、裕丈はそれを意に介さず、今後の探索の手掛かりとなりそうだと思い、男らの素性を聞き出そうとした。
 が、老人と男らとは元々面識はなかったらしい。よって、彼らについては何も分からない様子だったが、裕丈にしきりに特徴を問われて思い出したようだった。

「スズメバチ……」
「蜂が、どうかしたでござるか?」
「あのヤンキーどもめ、手の甲にスズメバチの入れ墨をしておった」
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